思わず縮こまる体を土方は懸命に支えた。ここで崩れれば銀八の思うようにされてしまう。
昨晩の屈辱が甦り、身震いしそうになるのを教師を睨み上げる事で何とか堪える。
「別に他愛も無い会話です。俺達が見つけた猫の世話を伊東先生にして貰ってるので、その様子を見に行ったたけです」
高杉の事は会話に出さなかった。本当は幼馴染の事を伊東に話した。
が、あえて猫の事を引き出した。そんな嘘が相手に通じるか分からない。
しかし土方の勘が正しければ銀八は自分に関わる人間が気に入らないのではないか。
だったら、高杉の名前は言わない方が良いのではないかと考えたのだ。
「ふーん、猫の話かぁ。なんだっけ?校長に頼み込んで、学校で飼う事が許された如何にも偽善者達のお話だっけ?」
「・・・!!
偽善だなんて…うっ!」
小馬鹿にしたように鼻で笑い、膝をついて目線を合わせてきた銀八に『偽善』と言われ、一瞬にして土方の感情が怒りへと向いた。
あまりの発言に言い返そうとすると、その口を銀八の掌が乱暴に掴む。
「偽善でしょ?そのまま淘汰されるべき生き物をお前らは生かしてるんだから」
『連れてった所で、引き取り手が見つからずに殺されるかもな』
子猫を見つけた、あの雨の日。
どうしたら良いか考えている時に高杉がそう言ったのを思い出し、土方はドキリとする。
しかしあの寂しい笑い方をする幼馴染がこの目の前に居る教師と同じだと考えるな、とかぶりをふった。
「ち、違う!伊東先生が助けてくれたんだから、淘汰でもなんでもない!」
「・・・お前、随分生意気な奴だったんだね。俺の授業の時と全然違うじゃねぇか」
「うぁ!?」
ズボンのチャックの上から自身を指でなぞられ、反射的に土方は声を上げる。
それを楽しむかのように今度は揉みこむように握るような動きをくる。
「ま、それは昨日のコトでよく分かったけど?そんですっげぇ強情な奴だって。
とんだ猫かぶり野郎だねぇ、土方くぅん」
「はぁっ、ぁ、やめ、ろぉ…!」
甘い痺れが体を駆け巡り、昨晩の快感が甦る。
男達に嬲られるのは嫌だった。
確かに嫌だった筈なのに、狂ったように喘いでしまった事を思い出し体温が一気に上昇するのを感じた。
途端にビクン、と腰が動くのをどうしても止められない。
「せんせ、や、だ」
「なぁ。お前どうやって伊東先生たぶらかしたんだよ?色仕掛けですか?発情させましたかコノヤロー」
だが、気持ちよさに意識が向かい始めた所で銀八の台詞によって冷静な考えを土方は取り戻した。
自分はなんと言われようが構わない。
悔しいことだがそれは自分が耐えれば良いだけの話だ。
しかし伊東を悪く言われるのはどうしても許せなかった。
『僕はそれを見ているし知ってるから絶対に見捨てたりしないよ』
伊東はそう言ってくれた。
どうして彼があんなに優しくしてくれるのか分からない。
だが、見捨てないという言葉は確かに信用に足ると土方は感じた。
高杉を見守ってくれ大人、という存在はとても頼もしく思えるからだ。
そんな彼をたぶらかされた、という言い方がどうしても許せない。
「…っ、アンタと一緒にするな!!」
拳を握ろうか考えたが、咄嗟に土方は銀八の頬を平手打ちし、そう叫んだ。
相手を許せない気持ちと同時に、殴った事への仕返しの恐怖に体が震える。
昨晩は挨拶をしなかっただけで酷い仕打ちをされたのだ。
忘れたわけではなかったが、それでも後悔はなかった。
「うっわー。初めて殴られた」
叩かれた事を理解出来なかったようで、銀八は暫し頬を押さえながらキョトンとした表情をしていた。
しかし状況を飲み込めたのかずれた眼鏡を直しながらヘラヘラと笑う。
「土方、お前本当にムカつくわ。
生意気だし、強情だし、正義面だし、おまけに追い詰められるとヒステリー起こすし」
シュ、と音がして、銀八のだらしなく胸元を締めていたネクタイが解かれた。
「でもそれが可愛い」
“陵辱したくなる”
ニタリと笑んだその表情が本当に恐ろしかった。
本当に表面だけ笑っているのだ。目は空虚のまま何も映さない。
その表情に土方が怯んだ一瞬をつき、銀八が外したネクタイが両手首を縛る。
悲鳴を上げる暇も無く次にベルトがとられ、ズボンのチャックが下ろされ、自身を取り出せる分だけ下着がずり下ろされた。
「やだ、いやだ!学校、ここ、学校、だ…!!」
「うん、そう。学校でーす。でも淫乱土方ちゃんは先生の前で自慰するんでーす」
「・・・!」
土方の背後にまわった銀八は縛られた両手を自身に添えさせ、更にその手の上に己の手を乗せる。
そして動きを誘導させるように上下に扱き始めたのだ。
「あっ、あぁ、いや、だぁ!」
「本当は嫌じゃないんだよ。お前はそうやって誰かの前で自分のをぐちゅぐちゅするのが大好きなドスケベ野郎なんだよ」
「あぁあっ、あ・・・」
理性は完全に拒絶を示している。しかし体はどうしてもついてきてくれず、この快感を懸命に拾おうとしていた。
その証拠に今まで柔らかかったソレは次第に硬さを帯びていく。
「おっ、俺は、いやだ…!こんなの、好きじゃない…!先生が勝手に、んっ、言ってるだけじゃねぇか…!」
「へーぇ。そういう事言うんだ。じゃあ何で昨日、俺の弟はお前の事助けてくれなかったのかなぁ」
「いやっ、め…」
いつの間に銀八の片手が、学ランの上から土方の乳首を押し潰す仕草をしていた。
直接ではないがもどかしい刺激に思わず体から力が抜けてしまう。
「アイツ、俺と一緒でぶっとんだ双子の片割れだけどまぁ常識はあるっちゃああるんだよね。
で、普通止めない?兄貴が生徒犯してたら。それを止めなかったのはなんでかなぁ」
「あっ、ぁ、違う、俺は嫌だった、
・・・嫌だった!!なのに、それなのに・・・」
「止めなかったのは、お前がすげぇ気持ち良さそうだったからだよ」
「ふ、ぅ、ぁっ、違う、違うぅう」
「違くねーよ。認めろよ、淫乱」
「あっ、いやっ、やだ、あっあっいやだぁああ」
土方の叫びも空しく銀八の攻めは続いた。
やがて銀八の手はいつしか離れ、自分だけの手で自身を慰めている事に土方は気付かなかった。
「・・・・っ、ぁ、あ」
「先生に感謝しろよー土方。
お前の良いトコロ、先生が引き出してあげたんだから」
漸く冷静に戻れた時にはネクタイで縛られた両手が白濁液で濡れてからだった。
射精した脱力感と、銀八の言うようにしてしまった自分に絶望感で心が潰されそうになる。
力なくうずくまる土方を抱き締めながら銀八は優しく耳元で囁いた。
「可愛い生徒だよ、お前は本当に」
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