声は上げ調子のまま、抵抗できない土方のズボンを脱がせていった。
その様子を悔しそうに眉根を寄せ、よっぽど嫌なのか目尻に涙を浮かべて土方が見ているのを、銀時は視界に入れる。
「なぁ、お前って俺に誓った割にはいつもそういう目するよね」
「…言っただろ、心は渡さねーって」
「だったら何?その目ン玉は体の一部だろーが。感情剥き出してんじゃねーよ」
下着をずらし、外気に晒されて震える土方自身の根元をきゅう、と掴んだ。
「俺の好きなようにして良いって言ったよな?その口で」
「・・・」
「ホント、ムカつく。土方君って」
しゅる、と土方の襟元で結んであったネクタイを解き、掴んだそこへと力いっぱい巻きつける。
「痛ェ…っ」
悲鳴を無視し、上靴を脱がせて今度は自分のネクタイを銀時は解いた。そして相手の足首を揃えさせ、解いたネクタイの端で縛り付ける。
何をされるのか理解出来ない土方の腰を頭の方まで持ち上げ、そのままの状態で足首を縛っていない方のネクタイの端を、彼の手首を拘束する手錠へと結んだのだ。
「全部丸見えだよ、土方君。ネクタイって便利だねぇ」
「畜生…!」
下半身の衣服は全て脱がされ、何も纏っていない状態。銀時からは土方の秘部が丸見えである。
ニヤニヤとその体勢を笑いながら、デスクの上に置いてあった液体状ののりに手を伸ばした。
「さかた、やめろ、まさかソレ」
「ああ、安心しろよ。ケツには突っ込まねーから」
「何・・・?あ、ぁっ!?」
キャップを全て外すと、彼はそのまま閉じられている土方の太腿へと垂れ流す。なんともいえない液体の感覚に土方は身悶えた。
「い、やだ、こんなの…ふざけんな!」
「はは、感じてるくせに、よく言えた台詞だなぁ」
容器に入っていた全てののりを垂らし終えると、土方の内股へと塗りこんでいく。太腿の隙間から零れたのりは土方の雄へと落ち、流れて腹へと辿り着く。
「うわ、クッセーなこののり。なんか乾いたらカピカピしそうだし、早めに終わらそう」
「たの、頼む。これ以上は、もう」
無理な体勢を強いられている上にのりを使われ、更に誰がいつ、生徒会室にやって来るか分からない状況。
土方が顔を真っ赤にし、弱々しく首を振って訴える。
そうやって嫌がられると余計にしたくなるのが性ってモンだよなぁ?
「大丈夫。そんなに接着力ねーから、帰って風呂入れば落ちるって」
まだ反応していない己自身を銀時は取り出すと、のりでヌルヌルになっている土方の閉じられた太腿の隙間へと差し入れる。くちゃり、と音を立てたソレの先端は、根元を縛られた土方のオスに僅かに触れた。
「…は、、は、っ、ぁ」
銀時が、まるで圧し掛かるように差し入れを開始する。あまりの圧迫感に土方は必死で酸素を求めた。
目を開いていると閉じられた己の太腿の間から、銀時のモノが出し入れされているのを目の当たりにしてしまう。
故にぎゅうと瞼をつぶり、スプリングが軋む音と肉のぶつかりあう音の羞恥耐えようとした瞬間だった。
「こんにちはー。ってアレ?銀さん達、まだ来てないや」
「・・・ッ!!」
挨拶をしながら入ってきたのは、声からして新八だろう。
真面目な彼は終礼が終わるとそのまま生徒会室に直行してくる。
「全くさっちゃんさんはバイトだから居ないのはともかく、他の人達が居ないってどういう事だよ、もー」
ブツブツ文句を呟きながら、新八がデスクの上に鞄を置く音がした。
それに構わずに銀時が腰を動かしていると、土方が殆ど動かせない体を振って『もうやめろ』と強請る。
いくら鍵を閉め、声を潜めていてもギシギシとベッドが鳴っているのだ。
新八が疑問に思わない筈がない。
「坂田、も、やめ…」
「なんで?ここでやめても、新ちゃんが居るからすぐにお家には帰れねーよ…?」
「はぁ、っは、で、も」
小声で訴えてくる彼に視線を下ろすと、土方の顔は僅かだが上気し、吐く息も甘い。
どうやら太腿に出し入れしている銀時自身に擦られ、土方の雄も反応し始めているようだ。
「あれー…もしかして興奮してる?」
「ひぐ!」
ネクタイを巻かれている裏スジをつつっと指先で撫でると、不意を突かれたのか土方は大きな悲鳴を上げてしまった。
「・・・?誰か居るんですか?」
新八がそう呟く。マズイ、と土方の顔が青ざめた。
「あれ、銀さんの鞄…仮眠室かなぁ」
置いてあった鞄に気付いたのか、靴音がこちらへ近づいてくるにも関わらず、銀時は動きを止めない。
「銀さーん?居るんですか?」
コンコン、と扉をノックしてくる。ビクリと土方が体を震わせた。しかし平然と銀時は返事を返す。
「え、あ、うん。居るよー」
「?
なんか息切れしてますけど、どうしたんですか?なんかベッドがギシギシする音が…まさか」
「はっ、ぁ、このエロ眼鏡。違ェよ。なんかベッドが調子悪ィから直し、て、ンだよ」
「そーなんですか?ビックリしたー。あ。僕、ちょっとトイレ行ってきますから」
そうしてまた足音が去っていった。生徒会室の扉が閉められたのを確認してから土方が口を開く。
「テメ、よくもそんな嘘がつけるな…っ」
「へぇ?正直に土方君とセックスしてる、とでも言えば、良かった?あっ、もう、イけそ…」
「うあ…ッ」
最後の追い討ちをかけるように、銀時は更に体重をかける。そして何度か太腿に出し入れをした後、達する寸前に引き抜いて土方のアナルにぶち撒けた。
「はぁ、さーて俺達の仕事が終わるまで、ここで待っててね土方君」
達する事が出来ず、ぐったりしている土方に言うと銀時は再びマット下に手を入れ、卑猥なピンク色をしたローターを取り出す。
「な…っ!」
「大丈夫。その間、飽きさせたりしねーからよ」
「やめ、やめろ!!嫌だ、い、ぁ、くう…っ」
放った精液のぬめりを利用して肛門にローターを差し込み、丁度前立腺の辺りで侵入を止めた。そして嫌がる土方の足首を固定していたネクタイを外し、その両脚を解放する。
「脚は自由にしといてやっからよ。優しいご主人様で良かったなぁ」
いやいやと首を振る土方に笑いかけながらネクタイをしめ。
「新八に勘付かれたくねーんなら、あんま大きい声出すなよ。まぁあんまり今日は仕事ないから、ちょっとの間だけど」
無慈悲にローターのスイッチを入れた。
「楽しんでね」
必死に制止をかける土方を残し、銀時は扉を閉める。
イく事も声を出す事も出来ず、只刺激を与えられて悶える彼を想像すると、銀時の顔に笑みが零れつつもイスに座る。
最後の一仕上げなので、ものの15分あれば終わる仕事。
故に、神楽と桂にはクラスの仕事に向かうよう言ってあった。
「あ、ベッド直りましたか?銀さん」
トイレから帰ってきた新八がそう訊いて来る。
「んにゃ。暫く立ち入り禁止な。スプリングが出てて危ない」
「ホントですか!?まぁ、もうすぐ学祭ですし使わないから良いですけど…というか、神楽ちゃん達来るの遅すぎじゃないですか?僕達で仕事始め…」
「いや、この仕事10分ありゃあ終わるから。俺居れば何とかなるから。だからあいつ等来ないの」
「はああ!?何ですか、それ!?僕知りませんよ!?」
「そりゃそーだろ。新八だもん」
さも当たり前かのように言うと、新八は溜め息をついて『そ−ですよ、新八ですよ』と項垂れる。
そんな彼の横で仕事を始め、銀時はさっさと終わらせようと目論んだ。
手持ち無沙汰なのか、新八は立ち上がる。恐らく、クラスの準備に向かうのだろう。
「あの、本当にする事なさそうなので僕、戻りますね」
「あいよー」
鞄を持って部屋を出ようとする新八が、ふと思い出したように口を開いた。
「銀さん。その…怪我、平気ですか?」
「平気だよ。あんまり痛くねーし」
「・・・あの、思ったんですけど、昨日の土方先輩達へのああいう態度は、良くないと思いますよ」
「・・・」
「特に土方先輩なんて…銀さんが高杉先生に手当てして貰ってる間、ずっと心配してくれてたんです。なのに」
キーボードを叩いていた指を銀時は止める。
・・・心配?そんなモノ、アイツがするワケがないのに。
「…そうだね。ありがと、新八」
すると、納得したのか新八は『それじゃあ』と言って微笑んで部屋から出て行った。
しばし間を置いた後ガタンと銀時は立ち上がり、仮眠室へと向かう。
「ひ…っ、う、坂、田ぁ…!」
全身を震わせ、今まで必死に声を抑えていたであろう土方が、身悶えながら名前を呼んでくる。
両脚はガクガクと頼りなく弛緩し、達する事の出来ない自身だけが主張していた。
「コレ、も…外…せ…」
息を細かく吐きながら訴えてくる。そんな彼につかつかと近寄ると、その黒髪を掴んだ。
「あ…ッ」
「なあ、なんなの?お前。なんで俺をこんな惨めな思いにさせんの?」
潤んだ猫目が疑問を訴えてくる。それが余計に銀時を苛立たせた。
今までありえなかったばかり事が土方と出会ってから起こるのだ。
そうだ。今まで誰も俺に逆らわなかった。
いう事を聴いた。
無視しなかった。
媚び諂って来た。
する事に注意なんかして来なかった。
なのに、なんなんだ。コイツ、一体なんなんだ。
俺の世界の理を覆そうとしてる。
「なんでだよ!?」
ああ、コイツはダメだ。関わっちゃいけない。
「さか、た。…じゃ、俺にも、教えろ、よ…ッ」
だって俺の大好きなものを肯定したんだ。
「なんでそんなに、人を、試そうとすんだよ…?」
俺の世界を、壊す男だ。
初めは関わらない方が良いと思って。
でも、一緒に渋谷に行ってから坂田への見方が少しだけ変わって。
本当はコイツ、寂しいだけなんじゃないかとか、そんな事を考えた。
だからあんな態度取ったら一人になっちまうぞ、って言いたくて生徒会室に来た。
ずっと疑問だった。
何が恐いのだろう。なんで相手を試すんだろう。
親しくもない誰かを庇える優しさを持っているのに。
俺を服従させてまで得たいものは何なんだろう。
「…試す?意味不明な事言わないでくんね?」
一瞬だけ動揺を見せた銀時の瞳が、再び冷たいモノに変わる。そして何か汚いモノを見るかのように土方の体を見ると、彼を苦しめていたローターとネクタイが外された。
「う…っ」
戒めから突如解放され、土方が呻くと同時に手錠も外された。また何か違う事をされるのかと様子を伺うように銀時を見上げる。
「…飽きたから帰るわ。お疲れさん」
しかし、土方の予想とは違って彼はそんな事を言ってくる。初めは冗談だと思ったが、銀時はそのまま仮眠室から出ると、デスクの上の書類やらを整理し始める。
「お、おい。待てよ。答えろよ!」
達することが出来ていない身体が中途半端に震えを催す。
なんとか脱がされた下着とズボンを履き直すと、ベッドの上から帰り支度をしている銀時に叫ぶ。
「お前、なんでこんな事ばっかしてんだ?
俺、確かにお前の言う通り誤解してた。人を寄せ付けねー、いけ好かない奴だって。
でもお前、ちゃんと優しい所もあるしちゃんと普通の…」
「普通って何だよ?」
やけに冷えた銀時の瞳が土方を射殺すかのような眼光で睨みつけてくる。
「優しかったら普通ですか?ちゃんと学校来てたら普通ですか?お友達と仲良しこよしで、家庭円満だったら普通かよ、コノヤロー」
「な、に」
「土方君、知らないみたいだから教えてやろーか。
本当に大事なモンってのはね。持ってる奴より持ってねー奴の方が知ってるモンなの」
そう言って、寂しそうに銀時が笑う。本人はそんなつもりはないかも知れないが、少なくとも土方にはそう見えた。
「持ってる奴らが線引きしたそういう普通なんてカテゴリに俺は、入る気ねーから」
俺は、お前とは違うよ。
そう遠まわしに言われた気がしてならない。
彼を少しだけ知って、少しだけ近づいた気がしたのは土方だけで、銀時は、本当に自分の事を性奴隷としか見ていない。
なんとなくそう感じた。
その後、土方はどうやって家に帰ったか分からない。
ふらつく体をすぐに湯船の中に沈め、汚された全身を洗い流す。
もう彼の事を考えるのはやめよう。
そう土方は思う。
アイツの世界には誰も居ない。元から世界がないから誰も侵入出来ないんだ。
大体、なんであんな野郎の為に俺が悩まなきゃいけねーんよ…
学園祭だってもう始まるってのに…っ!
そんな土方の苦悩に関わらず、とうとう銀魂学園の学園祭が始まった。
*
「いらっしゃいませぇ〜何名様でいらっしゃいますかぁ?」
「花子ちゃん、ご指名入りま〜す」
そして、いよいよ始まった学園祭。
昨年より来場者は多く、校舎の中も外も賑っている。
土方が担当するA組のコスプレバーも予想より人が続々と入ってきていた。
最も、普通の一般客は女子の可愛いコスプレ目当てのようだが、銀魂学園の殆どの生徒の目的は違った。
「土方くーん。こっち向いてー」
「オイ、土方ぁ!こっちオレンジジュース2つ〜」
あの鬼の風紀委員長、土方十四郎の女装コスプレを見ようと生徒達が押し寄せたのだ。
結局、彼が着させられた衣装はチャイナドレス。何故かB組の志村妙の猛然プッシュによる結果だ。
髪の毛も女子達に良いようにされ、長いウイッグをつけさせられて一つに結い上げている。
「…お待たせしました、お客様」
「おいおい〜愛想ないぞー」
ドカン、とテーブルに頼まれた品を持ってくると、クラスメイトの男子達がはやし立てる。あまりの屈辱に土方はプルプルと震えた。
「しかし、すげぇ繁盛してんなぁ。もしかしたらうちのクラス、売り上げトップいけるって」
「だといいけどな。ったく、なんで俺がこんな事…」
「はは、つか土方、それスリット入りすぎじゃね?」
「…俺もそう思う」
男子に指差されたおりょう特製のそのチャイナドレスは、スリットが深く、両側に入っている為に少し歩くだけで布が揺れて太腿が丸見えになってしまう。
「生脚だから毛ぇ剃って来いとか前日に言われてよ…どんだけ焦らされた事か」
「え、マジ!?じゃあ下とかどうなってんの?ちょっとめくって見ていい?」
「別に構わねーけど「オイてめー、誰の許可得てこの人のパンツ見よーとしてんでィ」
「ぎゃぁああ!!痛い、痛い沖田!!」
土方のチャイナドレスをめくろうとした男子の手首を、笑顔でギリギリと締め付けるのは総悟だ。
突然の来訪者に土方は驚く。
「総悟!こんな所でなにしてんだ、お前」
「いえ、風紀を乱す輩がいねーかと、学校中を見回ってる所でさァ」
(((「一番乱してるのは沖田だろ」)))
その場にいたクラスメイト達は心の中でいっせいに突っ込みを入れるが、勿論絶対に口には出さない。
「あれ?近藤さんは?」
「さっき志村姉を見つけたらしくて、猛ダッシュして行きましたぜィ。コスプレバーは上手くいってやすかィ?」
「今ンとこな。余計なギャラリーは多いけど」
銀時…や生徒会メンバーは誰もやってきていない事に、土方はなんとなく気になった。
意図的になのかそれとも、只単に生徒会の公務で忙しいのか。
「あ、じゃあ明日はヤベーかもよ」
話を聞いていたクラスメイトの一人が口を挟んでくる。
何事かと土方と総悟が視線を向けると、小声でその男子が耳打ちしてきた。
「明日は柳生の若が来る日だからよ。あそこの四天王とあんまり仲良くねーじゃん。お前ら」
「柳生九兵衛か…」
仲良くない、というよりは四天王が一方的にこちらを敵視している感じだ。
特にケチャラー北大路はマヨラーである土方を快く思っていないらしく、いつも難癖をつけてくる。
「他に沢山店があんだから、わざわざこんなイロモノな店、来ねーだろ」
北大路にこんなコスプレ姿は見られたくない。そんな土方の言葉は、現実にはならなかった。