なんとか平静を取り繕うとするも、あからさまに銀時の表情も焦りが滲み出ている。
それを見た途端、また銀時にキスされかけた事を思い出して顔が熱くなってきてしまった。

オイイイ意識すんな、すんじゃねーよ坂田!
確かにキスは気まずくなったけれども、一応俺達はセックスしてる中…っていやいやいや可笑しい。
フォローになってねぇ。クソ、頼む。誰かその罰ゲームは酷すぎると言って…

「あはー副長と総督ですかぁ。じゃあ、ちょこっとじゃなくて濃厚なハグに変更で」
「「なんでだよ!!?」」
「もう、銀さんに土方さん。将軍様の命令は絶対なんだから言う事聞かなきゃダメよ、ひっく」
「そうですよ副長ぉ〜がばっと潔く!うぃっく」

同時に同じ突っ込みを繰り出した銀時と土方だが、いつの間にか酒が入り始めている山崎と妙は聴きそうにない。
恨む気持ちでギッと山崎を睨むと、『グッドラック』というように親指を立ててくる。
あの野郎、後で切腹だ!そう思っている間にも、覚悟を決めたのか銀時が表情をしめ、腕を広げてくる。

「さあ、おいで土方君」
「ちょ、てめ、何やってんの!?流されてんじゃねーよ!」
「えーだって罰ゲームだし…仕方ないんだもん」
「だもんじゃねーよ、気持ち悪いんだよ!」

なんとかこの罰ゲームから逃れようとするも、相方の銀時がやる気になってしまった今、全員の視線が土方の方へ向いて余計に後に退けなくなる。そしてとうとう、近藤がとどめをさした。

「総督の言う通りだよ、罰ゲームだからちゃんとやらないとな、トシ」
「うぅ…近藤さん…」
「そうだよトシ。仕方ないんだもん、ジャストドゥイット」
「おめーにトシとか呼ばれたくねーんだよ!ていうか本当にムカつくコイツ!」

便乗してふざけてくる銀時に苛立ちつつも、近藤にそう言われたら弱いのが土方である。チッと舌打ちをしつつも抱き止める準備をしている銀時に一歩近づいた。

「小便してぇ」

その時だ。
今までずっと眠っていたと思われた総悟がそう言って立ち上がると、銀時に抱きつこうとしていた土方の手首を掴む。

「恐いんでついてきてくだせェ、土方さん」
「え、オイ総悟!?」

そしてそのまま部屋の外まで連れ出されてしまった。誰もいない静かな廊下を二人は裸足で歩く。

「そ、ご、どこ行くんだよ!?トイレは部屋について…」
「アンタ、馬鹿ですかィ?」
「はぁ?…いてっ」

エレベーターホールの壁に乱暴に押し付けられた。
総悟は幼い顔立ちの割に力がある。ギリ、と捕まれた両手首が軋む。

「そんなすぐに前が割れる浴衣着て、何を素直に総督と抱き合おうとしてんでィ」
「だ、だってそれは罰ゲームだから仕方ねぇだろってか、離せ…」
「しかも俺の前で」

総悟は土方より身長が低い。ゆえに彼を見る時は、上目遣いの総悟と目が合うわけだ。
その目を見て土方は背筋にゾクッとしたものを覚える。

その目の奥にあるものを土方は知っていた。
一度だけ見た事のあるソレは、ミツバが亡くなった後に誰が総悟を引き取るか、という親戚達が押し付け合いをしている嫌な会話を聞いていた時だった。

あの頃から、今まで小憎たらしいほどコロコロ変わっていた総悟の表情が消えた。
本当に感情が現れる時以外、彼はポーカーフェイスに心を隠したのだ。

「わ、分かった。もうしねぇ。だから部屋に戻ろう…」
「いい加減にしてくだせェ。どこまでふざけるつもりですかィ?」
「…っ、ぁ」

徐に股間を握られ、土方はビクッと体を痙攣させる。

「やめ、やめろ、どけ…こんなの…!」
「あらら、どうしてですかィ?婚約者だったら、普通の行為でしょう?」

総悟の肩を押し返そうとするも、やわやわと揉まれるのを進行されているからか手に力が入らない。
そうこうしている間に浴衣の前が肌蹴させられ、簡単に下着を下ろされてしまう。

「ゃ、総悟、ここがどこだか分かってんのか!?」
「分かってるに決まってんだろィ。だから、ここでするんでさァ」
「ひう!」

跪いた総悟が、剥き出しになった土方のペニスに舌をレロリと這わせる。
初めは試すようにちゅっちゅと口付けて吸っているだけだったが、やがて指でわっかを作って扱き始めた。

「あっ…ぅ、あ、だめ、だ、そうご、本当に…!」

ビクビクと内股を震わせ、息が荒くなっていくのを抑えながら土方は総悟の髪を掴む。

「俺の嫁になろうってお人が別の男と抱き合おうとしてたんですぜィ?これくらい仕置きしたくなったって仕方ありませんでしょう?」

唾液を多く絡めているのか、短時間にも関わらずじゅっぷ、じゅぶと厭らしい音が響き始める。
舌でカリ首、裏スジは指で撫でられ、気持ちよさにどうにかなってしまいそうだ。
しかし、土方はなんとか気を持ち直して総悟に言う。

「総悟…っだから、結婚の約束は…あれは…っ!」


『そ−ちゃんが、まだ勘違いしてるみたいですね』

総悟に言いかけて土方は、ふと痩せこけたミツバがそう言ったのを思い出す。

『…言わないんですか、本当のこと』
『ああ、アイツがあの約束で、少しでも希望が持てるんなら…』
『十四郎さん。じゃあ私の希望も、一つだけお願いして良いかしら』


「アレは?なんですかィ?」

問われ、土方はハッとして意識を現実に戻す。見下ろすと土方の脚に手をついた総悟が、口の端から唾液を零しながらニタリと妖しい笑みを浮かべる。

本当のことを言ったら、総悟はどうなるんだろうと考える。
ミツバを失った今、彼には実質、近藤と土方しか残されていないのだ。
ぐ、と土方は奥歯を噛む。

『土方さん…なんか俺達と一緒に居ないし、元気ないみたいだったし…俺も心配になったんでさァ』

…真実を知る事が、総悟にとって全てが良いとは限らない――。

「なんでも、ねぇよ…!」
「はぁ、そうですかィ?」

言いながら口の端を持ち上げて総悟は笑むと、抵抗しなくなった土方の性器を再び味わい始めた。


大好きな近藤さん
大好きな姉上

俺は2人が大好きだったけど、でも2人が大好きなのは俺じゃなくて土方さん。
どんなに頑張った所で背は伸びないし、あの人の人望には勝てないし
アイツを介さなければ二人にとっての俺の居場所がないことが悔しくて。
俺が欲しい場所にアイツが居るのが気に喰わなくて。

だったら土方さんを利用してやろうと思った。
クールぶってるくせに縋ってくる人間は放っておけない性質だから、俺の目論み通りにあの人は傍に居てくれた。

ざまあみろ。
アンタは一生、俺の手でも握ってればいい。
俺はその隣でほくそ笑み続けてやるよ。

そう思ってたのに。


『大丈夫だ、総悟』

姉上がこの世とさよならをする日。

『俺が居るから、総悟』

呟くようにそんな事を言ってくるから、溜めていたものが堰を切ったように溢れ出した。
土方さんだって泣きたい筈なのに、一生懸命鼻を吸って、泣けない俺の為に涙を流すのを我慢して。

ああ、だって。あの時握ってくれたあの人の手があんなに温かかったのに、愛おしいと誰が思わずにいれただろう。

疲れてても相手してくれる土方さん。
一人でいじけてたって、気づいて探してくれる土方さん。
ねぇ、だから何処かへ行かないで。知らない誰かの所へ行かないで。

近藤さんは志村姉に執着してるし、アンタまで誰かの…坂田銀時の所へ行っちまったら、俺は本当に世界で一人きり。


本当に俺は怖いものはない。だけど。
アンタが居なくなることだけが、ただひたすらに怖いんだよ。
お願いだからこの手を離さないで。

その為なら俺は、世界中を敵に回しても構わない。


「は、ッ…ぁ、う」

じゅぼじゅぼ、と鼓膜に叩きつけられるようになる音。
何度かこの水音を銀時の股間でも鳴らした事を、ぼんやりと土方は思い出していた。

「う、ぁ、そぉ、ご…」

快感にヒクつく足をなんとか奮い立たせながら、まるでキャンディでも舐めるような仕草で可憐な口に土方の性器を出し入れする総悟を見下ろす。
んっんっ、と小刻みに聞こえてくる幼馴染の声に官能が余計に刺激された。

「もっ、やだ、ぁ」
「やだやだ言う割には、チンコぐちょぐちょじゃないですかィ。お約束ですねェ」
「ふ…、あ!」

くりゅ、と総悟の爪が徐に尿道を刺激し、あまりの気持ちよさにビクン、と反応して土方は背を反らした。その様を見てケラケラと総悟は笑う。

「あれぇ?もしかして土方さんって痛いのがお好みですかィ?」
「は、はぁ、ン、なワケねーだろ…!」
「ああ、それとも俺と姉上を重ねて興奮した…?」


今まで快感に伏せられていたまつげが、絶望を感じたかのように震え始める。
そんな土方の表情を見て、総悟はまたニコリと微笑んで見せた。

「総悟…お前、俺をそういう風に見てたのか…?俺が、お前にミツバを重ねてるとでも…」
「えぇ?違うんですかィ?」
「当たり前だ!俺はアイツが死んだ時から、一度だって…う!」
「冗談でさァ。そんな熱くならねェでくださいよ」

熱くなるんなら、ここにして…と再び総悟の舌技が土方を攻める。
なんとか言葉を紡ごうとしているようだが、土方の口から漏れるのは甘い吐息だけだ。

「そう、ご、もうやめろ、誰か来たらどうす…ン、あっ、ぁ、」

やめろと言いつつもびくん、びくんと体を痙攣させる。そろそろ限界なのか弱々しく総悟の髪を掴んだ。

「やっ、ぁ、だ。も、出る、出ちま…う、あっ、ひっ」

竿だけではなく根元の袋をコリコリと刺激したり、陰毛の生えている辺りを優しく撫でる。
するとよほど気持ちが良いのか、土方はビクリ!と背を反らして壁に身を預け。

「あっ、ぁあ…!!」

熱いものを総悟の喉に叩きつけた。初めての咥内射精に総悟も驚いたようだが、すぐに何事も無かったかのようにゴクリと土方の精液を飲み込んだ。

「ふ…お前、飲んだのか…?」

幼馴染の咥内の中で果ててしまった、というあまりの羞恥に土方は顔を真っ赤にしながらしゃがみこむ。
そんな彼にグイッと顔を近づけると『勿論』と述べて総悟は土方の頬に触れた。

「可愛いなぁ、土方さん。さすがは俺の将来のお嫁さんでさァ」

頬に触れていた手を下ろし、そのまま乱れた浴衣を更に肌蹴させて腹に触れた。
そして撫でながら総悟は呟く。

「ああ、本当、なんで土方さんには子宮ないんだろ。あったら、孕むまで犯してヤんのに」
「・・・そうご・・・?」
「処女膜ぶち破って破瓜させて、妊娠させて、土方さんに雄の俺を焼き付けられるのに」

ねぇ、土方さん。
どうしたらいつまでもアンタ、俺の傍に居てくれる?誰の目にも触れずに、俺の世界に居続けてくれる?

そんな事を考えている総悟の発言に少し気分を悪くしたのか俯き、乱された浴衣を直し始める。

「…そういう事いうの、やめろ」

そう低く言うと下着を履きなおして立ち上がった。
やめろ、と言われても撤回なんかしたくない。総悟がそう思っていると手を差し出された。
思わず目を見開いて見上げてしまう。

「言ったろ。俺が傍に居るって」

そして、『部屋に戻るぞ』と何処か柔らかい口調で言われた。
ずっとじゃねぇくせに。と心の中で呟きつつも総悟はその手を取る。

あの時より少しだけ大きくなったけれど、変わらない温もりだった。


「ひっじかーたくーん。昨日は俺との罰げーむサボってどこ行っちゃってたのー?」
「・・・。
そ、総悟のトイレに付き合ってた」


翌日。朝食はバイキングなので備え付けのマヨネーズを皿に盛った食事に乗せていると、眠そうな銀時に気だるく訊かれてしまった。
思わずギクリとしつつも、土方はなんとか答える。

「ふーん?なっげぇ小便だったねぇ。あ、それともウンコ?」
「てめぇ、今から朝食取ろうってのに嫌がらせか?コラ」

あの後思ったよりも時間は経っていたようで、部屋に戻ると他の部屋の面々は『消灯だから』という理由で早々に居なくなっていた。消灯という理由で部屋に戻る面子でもなかったが(明らかに銀時は寝に戻ったのだろうが)、土方は何処かでホッとしていた。

総悟は寂しがりやな上に独占欲が強い男だ。
あんな状態の後に戻って、彼の前で銀時と罰ゲームの続きをやれと言われていたら危うかった。

「・・・ま、いいや。あんまり一人で気張ろうとすんなよ。それが土方君らしさでも、ね」
「え」
「銀さん、相談くらいは聞けるからさ〜」

よしよし、と土方の頭を撫でると銀時もB組のクラスメイトに混じって朝食を取りに去って行った。その後ろ姿をしばしの間、呆然と眺めた後に土方はハッと我に返る。

「な、な、なんだよアイツ…っ」

銀時に傾きかけた心を、ぺペッと髪を払う事で元に戻す。それでも顔が熱いのが直らない。
やっぱり銀時の様子が可笑しい。というか変わった気がするのだ。
今まで冷たい所しか見せてこなかった彼が、時々柔らかい表情をするようになったのだ。

『貴方と接触するようになってから銀さん、少し変わったわ』

猿飛も恐らく早くに察し、気付いた事なのだろう。だが、彼女が心配するような事を土方がする事は…出来る筈がなかった。

だって俺の未来は、総悟のものなんだから…。


結局修学旅行中は銀時と総悟の事ばかりについて考えさせられてしまい、あっという間に最終日の夜になってしまった。最終イベントとなるのはキャンプファイヤー。
後夜祭の時に出来なかったから修学旅行でやろうというのが、どこか発想の可笑しい銀魂学園らしさだ。

「じゃ、土方。風紀の見回りよろしく」
「ああ」

前のクラスの風紀委員から引継ぎをされ、土方は見回りを始める。はしゃいだ生徒が抜け出したり、旅館近くの森に入り込んでしまわないように、という番も兼ねていた。

「おーい、誰かー」

キャンプファイヤーから少し離れただけで、周りは雑木林のせいかものすごく暗く、静かになる。そんな場所から声が聞こえ、ビクリと土方は肩を揺らした。
隠してはいるが、極度の恐がりである彼は恐る恐る声の方へ視線を向ける。

「ねぇ、マジで誰か居ないのー!」

まさか幽霊…山崎を呼んで生け贄に…そう思いかけた頃、聞き覚えのある調子に気付いた。

「坂田…?」

声の方に駆け寄ると暗くて分かりにくいが崖のようになっていた。その下を見下ろせば、案の定助けを求める銀時の姿。

「…何をそんな所でふざけてんだてめー」
「あっ!土方君!ちょ、落ちたの!見りゃ分かるだろ、何処に目ン玉ついてんだコノヤロー」
「上等だ!助けてやろうかと思ったがやっぱりやめ…あれ?」

下を覗き込んでいた体勢を戻そうとした途端、土方はバランスを大幅に崩す。

「え、嘘でしょ、ちょっと土方く…ぎゃあああ!!」


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