「トシ、とりあえず脱げ」
「・・・はい?」
それは、松平のとっつぁんが俺達の屯所にいきなり現れた事から始まった。
公開調教
突然の命令に土方は言葉の意味が把握出来ず、思わず情けない声を出してしまった。
いつもは警視総監である松平に謁見する時はこちらから向かうものだが、
今日は彼の方から真選組の屯所に赴いたのだ。
…しかも、沢山の撮影機具とスタッフを引き連れて。
「いや、あのすみません。もう少し説明とか、もっと…」
「とっつぁああん!
いくらアンタの命令でも土方さんの肌を
公衆の面前に真っ昼間から晒すワケにはいかねえでさぁ!
せめて夜中に出直してくだせィ!」
「総悟ぉおお!お前は黙ってろ!
つかバズーカを向けるな!
むしろ時間帯の問題か!?」
今まで黙って話を聞いていた総悟がいきなり立ち上がり、
自分の上司に向かってバズーカを向け始めるものだから
土方は命がけで彼を止める。
そんな騒ぎなど気にもせずに近藤は松平に訊く。
「…とっつぁん、また俺、なんかしたっけ?」
「いやさー実はさー なんか暑苦しい男世帯実態のホ○AVを作ってくれって
上からオジサン頼まれちゃってさー
んで、トシが一番適任そうだから
とりあえず脱いでその辺の隊員に襲われてるトコを撮りたいんだよね」
煙草の煙をスパーと吐きながら語る松平に対し、土方はかなり脱力する。
なんだ、そのアホみたいなわけわからねェ依頼は…!
というかなんで俺!?と頭の中でグルグルと考える。
「いや、意味わかんねぇ。
大体そういうのって総悟みてェなちっこくて華奢な女顔の美少年が
襲われてた方が需要あんじゃねーの?」
「土方さん…!美少年だなんて褒められたら俺、照れちまいまさァ!」
「…なんか自分で言った筈なのにすげェムカつく…」
棒読みでニヤけながら言う総悟に拳を震わせていると、
ガサガサと懐から松平は紙を取り出す。
「いや、なんかそれが条件あんだよ。えっとだな。
『なるだけ背が高い男』
『なんか抵抗がすごそうな男』
『普段高飛車な男が組み敷かれてるの見ると興奮するし』
『いつもは低い声で喋ってるけど喘ぐ時は高くなるギャップ最高』
『鬼の副長がヤられてる所を見たい』
『むしろ土方十四郎』
…などなど全国のお嬢さんからの要望だ」
「条件って言ったのに最後は要望というかなんで俺を指名!?
しかもなんでホ○ビデオ作成でお嬢さんの要望を請け賜るんだ!?」
得体の知れない陰謀が渦巻いている感じが否めない土方は、
松平が相手だというのも忘れて怒りを露わにし始める。
そんな彼の肩に、総悟はポン、と手を置いた。
「まぁまぁ土方さん。そう怒りなさんな。血管が切れやすぜィ」
「もういっその事切れて欲しいくれェだ!
やらねぇ、絶対に俺は引き受けねーからな、そんな事!」
「…だがトシよぉ、これ断ったらオジサンの首間違いなく飛ぶし、
そうすると真選組の存続だって危ういぞ?」
「う…」
真選組の事を言われると土方が弱くなるのを、松平は知っていた。
真選組にとって松平は強力な後ろ盾なのを利用し
更に彼は切り札を出してくる。
「ほら近藤、おめーからも何とか言ってやれ。局長だろうが」
「え、俺!?えっとトシ、ほら、
とっつぁん直々に頼みに来たワケだし
それを無下にするにもいかんだろ?」
「近藤さん…」
勿論、切り札というのは近藤。
何かあったときに彼を引き合いに出せば大抵上手くいく。
今回も例外ではないようで、少し俯いて考え込んだ後、土方は言った。
「わぁーったよ。やってやるよ畜生」
「はっチョロイもんだねィ」
「…オイ総悟、何か言ったか?あ?」
余計な一言を浴びせて逃げ出す総悟を、
刀を振り回しながらそれを土方は追いかける。
そんな一部屋の逃走劇を見守りながら、
煙草の火を灰皿に押し付けて松平は近藤に言う。
「問題は誰にヤらせるかだなぁ…
あの調子じゃ、トシは
他の下っ端の隊士にヤられるのは嫌だろうし」
「そうだなぁ、出来ればこの中の誰かで収めないと…
そしたらやっぱり総悟に…いやいやアイツは未成年だし…」
うーんと腕を組んで悩む近藤の前に、
土方の追跡を逃れた総悟が挙手をした。
「近藤さん、未成年なんて関係ねェでさァ!
安心しなせィ、毎晩夜這い仕掛けてるんで
この人鳴かすテクは誰にも負けねェ!」
「オイイイ!!
どさくさに紛れて何言ってやがる!
つーか、俺はお前にヤられてる所を
カメラに収められるなんて絶対に嫌だ!」
「でもよォ、トシ…真選組隊士、っていう条件に
合ってるのはこの場には総悟しかいないんだよ。
だからここは…」
「ふっくちょぉ〜う!
監察方山崎退、お茶を届けに参上致しましたっ!」
またもや収拾がつかなくなってきている所へ、
何故か上機嫌の
(しかも局長ではなく副長に語りかけながら)
山崎が空気を読まずにスパンと障子を開けて現れる。
部屋の中の人間の視線が一斉に注がれ、山崎はビクついた。
そんな彼に、ゆらりと土方は近づく。
「えっ、え、何?どうしたんスか?」
「…山崎ィ、丁度いい所に現れた。…俺を抱け」
かなりの至近距離でそう詰め寄られ、山崎は混乱極めながら叫ぶ。
「すみません、そりゃあ確かに上機嫌で入ってきたのは悪かったですけど
俺は副長に命じられてお茶運んできただけなのにいきなり抱けなんて…へ?」
普段のようにてっきり『切腹』を申し付けられたのかと思っていたが、
土方の言葉を繰り返してハタと気づく。
顔を上げれば眉間に皺を寄せつつも少し照れくさそうな土方。
「トチ狂った事頼んでるのは承知してんだ。でも俺…」
「副長…」
状況理解が出来ない山崎であったが、
なんだか某CMのチワワのようにフルフルした感じの
儚げな土方の姿にきゅんと胸を打たれる。
思わず鼻息を荒くしつつ大好きな副長の肩を掴んだ。
「副長が望むならこの山崎退、優しく抱いて差し上げ…」
「あぁ山崎。茶なんてわざわざ悪ィなァ」
が、その刹那にドSオーラをまとう総悟が
茶を乗せた盆を受け取りながらニッコリと微笑む。
一瞬にして表情が凍る土方と山崎。
そんな彼らを無視して軽々と片手でバズーカを肩に乗せると
小首を傾げて笑顔を向けた。
「ってなワケでもうお前はとっとと退場しなせィ」
「ちょ、総悟君!?やめ…」
「ぎゃああああ!!」
「…近藤よォ、これは相手を総悟にしとかないと犠牲者が増えるぞ」
「そうだな…なんか撮影前に屯所が吹っ飛びそうだし…」
総悟がバズーカでぶっ飛ばすのは日常茶飯事であったが、
今は生活がかかっている。
そんなワケで松平と近藤は主演男優を土方と総悟に決めた。
「じゃっオジサン達は屯所内を撮影してくるから」
「ザキ、トシが逃げ出さないようにちょっと見張っててくれな」
「はいよっ」
「…この後に及んで逃げるかっての」
そうして土方、総悟、山崎を残して松平達は
スタッフを引き連れて部屋を出て行く。
後には気まずい沈黙だけが残った。
「土方さん」
暫く経った後、この短期間の間に
昼寝の準備をしようとしていた総悟が
いきなり身体を起こして土方を呼ぶ。
だがこの状況に至るのが不本意は土方は勿論無視だ。
「土方さーん」
「…」
「チッシカトかよ、このクソドMが」
「なんだってんだようるせェな!」
「うぉーみんぐあっぷ、しやせん?」
「は?え、ちょ、何す…!」
土方ににじり寄った総悟は、
いきなり持っていたアイマスクをバチンと相手に装着させる。
いってェ!と叫ばれたがお構いナシ。
相手の視界を奪ったのを良い事にキスしながらそのまま畳に押し倒す。
そんな二人に山崎の猛烈な突っ込み。
「ちょ、アンタら何おっぱじめようとしてんですかぁ!!?」
「あーそっか、いたんだっけ。…触ってみるかィ?おめェも」