欲しいものは、なに?



<ねぇ、こんなに.2>



怨まれるのは慣れていた。
捕らえた浪士達から「裏切り者」やら
「何故腐った幕府に仕える」やらと
罵倒されるのは慣れていた。

俺には小さい頃から一緒の銀時も桂もいたし
何より松陽先生が居てくれる。
俺には俺の世界があって、そこで暮らしてるから
唾を吐かれようが、疎まれようが
その辺で死体が転がろうが構いやしなかった。

だが、そこで今までにない変化。
おおよそ他人なんかに興味を持たなかった銀時が
「美味そうな兎見つけた♪」
と嬉々として、ある浪士に目をつけたのだ。

どんな別嬪かと、
少しは好奇心が湧くのは必然だった。


「ちょっとぉ〜なんで高杉、ついてきてんの?」

「うるせェな。俺は居ないモンとして扱え」

「…いつもシカトするといじけるのは何処のどいつだよ」

「あァ?何か言ったか?」

「言ってません〜」


銀時がご執着の兎は指名手配書で見た事はあった。
土方十四郎。
だが写真で見る限り、彼は兎というよりは
今にも爪を立てて引っ掻いてきそうな…


「あ、まだ寝てる」

「おい銀時ィ」

「なぁに〜?」


土方が捕らえられている部屋は
浪士達を上に引き渡す前に一時的に入れる場所。
取調室…と言えば聞こえはいいが、いわゆる牢屋だ。
重い扉を開いた先には檻に近い鉄格子が並び、
その奥には簡易なベッドと厠があるのみ。

窓すらない息苦しい空間。
勿論『取調べ』する為に、多少の拷問器具もあるせいか
ふき取られていない血飛沫が
そこかしこに残ったままだ。

その部屋の一つに、土方はいた。
まだ眠っている彼はベッドの上で転がっている。


「手錠も猿轡も何もつけてねぇじゃねェか」

「え?だって必要ないもん」


普通、鎖に繋ぐかはともかく猿轡は必須だ。
プライドの高い浪士共は
捕まるくらいなら、と舌を噛んで自害する
ケースが少なくない。


「平気。コイツは死なないよ。
 確かにプライドは高いけど…っ!?」


土方を起こそうとしたのか、
銀時は檻の中に入ってベッドに近づいた。
その時だった。
今まで眠っていたとばかり思っていた土方が
突然起き上がり、銀時に飛びかかったのだ。


「コイツの首を折られたくなけりゃ、俺を逃がせ!」


凛とした声が部屋に響き、強い瞳が俺を貫く。
銀時の背後に回り込んで首を捕らえるとは
アイツが油断していたとはいえ、かなりのやり手だ。

目を細めて品定めをするように
土方を眺めていると、驚愕を孕んだ声が続く。


「お、オイてめぇ聞いてるのかよ!
 コイツがどうなっても…」

「クク、だせぇな銀時。
 人質らしいぜェ?お前。俺に命乞いでもするか?」


焦るどころか悠長に話しかける俺を
土方は驚いたように見る。
おいおい、敵が2人も居るのに隙作ってんじゃねーよ…
と思っている間に。


「誰が高杉に命乞いするかってのよ。コノヤロー」
「あうっ」


形勢逆転。
土方の身体は銀時によって硬い床に押さえ込まれた。


「クソ、放せ!」
「寝てるふりしてるのは良かったけどね。
 もう少し俺が近づいてからの方が良かったかも」


そうのん気に喋りながらもアイツは
どこからか取り出したボールギャグを
キャンキャン騒いでいる土方の口にはめ込む。

「んん!?うー!」
「高杉ー。
 俺ね、猿轡よりボールギャグのが好きなの」
「へぇ?どうしてだい」

器用にベルトを土方の後頭部でとめ、
突然喋る術を失って混乱している彼の身体を
ヒョイとベッドの上に乗せると
瞬時に脚を大きく開かせたままの状態で
ベッドに手錠で繋ぐ。

相変わらず銀時は早業に長けているようだ。


「だって、こんな綺麗な子が
 ダラダラ涎垂らして喘ぐなんて最高じゃない?」


まるで子供のような無邪気さで言う。
だが彼の無邪気ゆえの残酷さも知っている。


「ん!ん!!」
「あぁ〜恥ずかしいねぇ。
 こんなに脚開いちゃってさぁ」


今は元気に抵抗する土方が
コイツの躾によってどんな風に乱され、従順になっていくのかなんとなく気になった俺は。


「ま、これからはずっと開きっぱなしになるから
 今から慣れといた方が良いかもね?」


銀時とコイツらが抱き合う様を想像すると
ゾクゾクして仕方がなかった。


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