このお話は銀土監禁連載です。
真選組と攘夷組が入れ替わっていて
松陽先生が生存、近藤さんが処刑されています。
舞台は銀魂設定ですが完全パラレルに近いですし
好みも分かれると思いますので
読んで下さる際にはご注意を〜!
「おいヅラぁ、そっちに行ったぜ。回り込め」
「ヅラじゃない。桂だ。それに俺が行かずとも」
「ああ、銀時が行ってるって?
クク。働き者だねぇ、アイツも」
幕府は天人に負けた。
そして日本を護る為に戦った俺達は、
只の反乱分子と見なされた。
だから近藤さんは処刑された。
あの人は最後まで笑ってた。
最期の最期まで微笑んで、
俺達に「心配しなくていいぞ」って笑って
数日後、あの人の首は
見せしめとして晒された。
切腹もさせて貰えず、斬首刑にさせられた。
『トシ、総悟。
俺がもし居なくなったとしても
絶対に世界を憎むなよ』
なぁ、アンタはそう言ったけどさ。
晒されたアンタの首を見て
俺と総悟が何を思ったか知ってるか?
何を決意したか、知ってるか?
『…土方さん。
俺ァどうやら、肺の病みたいでさァ。
きっと姉上のように…長くない』
『・・・そうか。
じゃあお前は何を望む?』
『近藤さんを辱めた奴らを、皆殺しにしてェ』
『はは。初めて気が合ったじゃねェか、総悟』
俺も総悟も近藤さんに拾われ、
刀の振るい方も生きる場所も見つけたクチで、
俺達以外にも近藤さんの世話になった連中は沢山居た。
『土方さん。沖田さんの気持ちを汲みたいのは分かります。
でも、きっと近藤さんは…
俺達が世界を敵に回すなんて事、望んでません』
この戦争が終わったら、江戸で一旗あげよう。
勿論近藤さんが長で、
俺と総悟でどっちが片腕になるかで揉めていた。
そんな、夢と希望に溢れていた時もあった。
でももうそれは、ない。
近藤さんは世界に奪われた。
総悟は連日のように血を吐き、
俺の精神も何処かで病み始めていた。
『…止めるなら今だけです。
土方さんの言葉なら、きっと皆も聞いて…』
『山崎。
俺達がここで止まったら、
他にどうやって近藤さんの生きた証を証明出来る?
俺は死ぬまで、地べた這い蹲ってでも戦い続ける。
あの人の存在を、護り続ける』
そう、俺は立ち止まるわけにはいかない。
「一番危険視すべき男…真選組の土方十四郎。
奴さえ潰せば組織解体は見込めるゆえ…
確かに幕府も膨大な報奨金を設けている。
しかし、銀時が彼に目をつけているのはそれだけが理由か?」
「知らねーよ。
でも、一度対峙してからアイツ、『美味しそうな兎を見つけた』
とか言ってたから惹かれるモンがあったんじゃないのかねェ」
「とりあえず高杉。俺達も行くぞ。
ここまで追い詰めて銀時一人任せで
逃がしでもしたら、また上にどやされる」
「ハッ。
どやされるのは俺達じゃなくて松陽先生だろーが」
*
その強い双眸を見て
純粋に『手に入れたい』と思った。
初めて対峙した時、
泥だらけの顔で刀を俺に向けた彼の姿は
男だというのに美しさすら感じさせた。
長い黒髪を束ねて揺らし、
猫目はギッとこちらを睨みつけ
そして黒い着流しの合間から覗く精練された身体。
純粋に『欲しい』と感じた。
その男の名は土方十四郎。
幕府に仕える俺達と、敵対する男だった。
「あぁ?上に報告しねぇ?
どういう事だ銀時ィ」
「だって欲しいんだもん」
そして俺はようやく彼を手に入れた。
追い詰めて追い詰めて、疲弊した所で
支給されたばかりの麻酔銃を打ってやった。
今は隣の部屋でぐっすりと眠っている。
「だもん、じゃねェ!
いいから部屋の鍵を渡しやがれ」
苛々しながら高杉が言ってくる。
コイツ、土方を捕まえたのを松陽先生に
報告したいだけだろ。
魂胆ミエミエだっつーの。
「銀時。
ここに土方を捕らえておいても意味がないだろう。
俺も、上に引き渡すべきだと思う」
「・・・上に引き渡したら、どーせ拷問でしょ?
お前のアジト吐けーってさ。
で、最終的に晒し者。」
高杉と一緒にヅラまでそんな事を言ってくる。
天人に迎合した今の幕府なら、
恐らくとんでもなくえげつない拷問をするのだろう。
美しい土方の体を見るも無残な形に変える筈だ。
しかも、俺が知る限り土方は簡単に口を割るような奴じゃない。
結局喉も潰されて喋れなくなって
ボロボロにされて捨てられるのがオチだ。
折角捕まえた愛しい兎を、
そんな結末に導きたくはない。
「あ、分かった。
じゃあ銀さんが拷問して、あの子の口割らせばよくね?」
「「は?」」
「なんてグッドアイデア!
というわけで土方捕まえたの内緒ね。
勿論松陽先生にも〜」
「あ、おい!待て銀時!
貴様、拷問なんぞやった事がないだろう!」
「クク。
多分、アイツの場合は痛めつける拷問じゃないぜ、ヅラ」
「ヅラじゃない。桂だ。
というかどういう意味だ、高杉」
「さぁねェ。楽しそうだから俺も行ってくる」
ガチャリ。
重い扉を開けて、そこに居たのは
いまだ眠り続ける俺のお姫様。
これから自分がどうなるのかも知らないで
懇々と眠っている。
「さて、どんな声で鳴いてくれんのかな…?」
そう。
あの日僕は、可憐なる君に狂うような恋をした。