俺達が予約した真選組いきつけの旅館。そこで今夜、俺は銀時と過ごす。
付き合ってから3ヶ月。アイツと会えるのは本当に会える時間は限られていて、泊りがけで一緒に居るなど考えられないほどで。
「土方君、ププッ見てみて!坂田様だって!ププッ」
「…そうだな」
部屋に通され、そこに貼ってあった名前を見ながら銀時が小声で肩を叩いてくる。
本当なら俺名義で予約するところなのだが、何故か銀時が『俺の苗字にして!』と強く推してくるから従ってやったのだが。
「何がそんなに嬉しいんだよ?」
「だって、なんか夫婦みたいじゃね?土方君が俺の姓になったみてーじゃね?」
「・・・」
あー成る程。そういう事を言いたかったワケか。まぁ俺には理解出来ねーが、アイツが楽しそうなら良しとするか。もうすぐ銀時の誕生日だし。
…そう。今は10月9日の夜9時。
あと3時間もすればアイツの誕生日になる。
こんな遅くになっちまったのは俺の仕事が押してしまったからで、それでも『誕生日を土方君と迎えたい』というアイツの願望を叶える為にこうして俺達はやってきた。
実はこの旅館、役人御用達であるせいか中々に格式が高く、部屋には専用の露天風呂もついている。
「銀時、ほら見てみろ、露天風呂がついてんだぞ」
言いながらカラカラと外へと通じる扉を開け、ふとそこで気付いた。
…ん?お?ちょっと待て。
今夜?泊まる?俺と銀時が二人で?ここで?
そこまで考えて、体が一気に熱くなる。
そうだ。忘れていた。
俺は、貧乏な恋人の為にこの高級旅館に誕生日を過ごさせてやる事しか考えていなかった。
だが常にあの股間や下ネタについて言ってくる色欲天パー魔人のアイツの事だ。
『誕生日プレゼントに、土方君を頂戴v』とか言いかねねぇ!
抱き締めあった。キスはした。でもまだ抱き合っては居ない。何度かそういう雰囲気になった事はあるが覚悟が足りなくてやんわりと拒否し続けてきた。
(…逃げよう、今すぐ)
俺は開けかけた扉を閉め、そう呟いて決意する。だが。
「本当?後で一緒に入ろ」
後ろから羽交い絞めにするように浴衣に着替えた銀時が抱き締めてくるから、勿論俺は逃げられない。
更に耳に吹きかけるようにアイツは話し掛けて来るからゾクッと体の芯が震えた。
「二人きりだね、土方君…」
「ぎん、とき。俺」
考えてるんだろうか、銀時は。俺が今さっき考えていた事。
どうしたら良いんだ。このままキスされたりだとか、着流し脱がされたりだとかしたら…。
「やーだ。そんな緊張してんじゃねーよ」
笑いながらそう言ってペチッと頭を叩いてくる。
「俺は、お前が一緒に誕生日迎えてくれるだけで嬉しいから。そんなご奉仕とか望んでねーから」
「だっ誰がご奉仕だ!ンな事更々考えてねぇよ!」
「そぉー?」
ニタニタしながらも彼は俺から離れ、『何か面白いテレビやってねーかなー』と座椅子についてテレビをつけ始める。
その様子を眺めながら俺は、安心したのと同時にどうしたら良いか分からなくなる。
そんな事を言っても普通の男女の恋人同士が泊りがけで誕生日を祝うとしたら、やはりそういうのは必然的に致すのではないのか、だとか。むしろ男同士ではどうやるんだ、とか。
色々そんな事を考えたけど。
でも、アイツの誕生日だし。望んでない筈はないだろうから…喜ぶならしてやりたい。
だって俺が仕事で待ち合わせに遅れても、アイツはいつも笑って迎えてくれるから。
「あっ、ちょっとなんでテレビ消すの土方君!今、丁度…」
「銀時」
テレビの電源を消すと銀時が不満げな声をあげる。でも俺は熱っぽく名前を呼んで近づいた。キシッと畳が軋んで、心臓が可笑しなくらい跳ね上がる。
「え、何」
「あ、あ、あのな」
銀時も俺の尋常ならない雰囲気を悟ったのか真顔で訊いてくる。俺はどもりつつも彼の隣に膝をつき。
「銀時の誕生日、祝わせてくれ」
「へ?何で?」
更にキョトンとした顔で言ってくるから、言わせるのかぁああ!!と思いながら、何て答えれば良いんだと考えた挙句。
「え・・・体?で?」
「へぶし!!!」
ストレートすぎる答えだったかと思った直後、盛大に謎の雄叫びを上げて銀時は机に思い切り額をぶつけた。
「え、何これ嘘じゃね夢じゃね幻覚じゃねドッキリ番組じゃね」
「ブツブツ呟くな!嘘なワケねーだろ!」
「だって疑いたくもなるよ!あの土方君が俺の誕生日を一緒に迎えてくれるだけじゃ飽き足らず(?)、かっ体で祝うとかねーもん、絶対ぇねーもん!」
「じゃあ、証明してやるよ…!」
「ちょちょちょ、土方君…ぁっ」
銀時の言葉にムッとした俺は、アイツの股間に指を這わせる。
浴衣を着ているから、開脚させてしまえばこちらのものだ。
…ムキになっていたのもあったと思う。
でも男とヤる知識なんてなかった筈なのに、気付けば俺は導かれるようにアイツの牡を舐め始めていた。
「ん、ふ…」
下着をずらして飛び出たソレを、とりあえず確かめるようにチロチロと尿道を攻め、その後に両手で擦りながら後にパクッと咥えてみる。
コイツ、何処なら気持ち良いんだろう…そう思い様子を伺おうと視線だけ上げると、舐めるように俺を見下ろす銀時と目がバッチリ合い、一気に羞恥心が込み上げた。
「テメッテメェ!何見てんだよ!」
「えぇえ!?」
ムカついて顔を叩くと、ほっぺたを押さえながら銀時は反論してきた。
「だって見たくなるでしょうよ!土方君だよ?土方君が俺の息子さんをお舐めになってるんだよ!?」
「ッ、言うな馬鹿!人がどんだけの決意を持ってやったと思ってんだよ!」
「言うよ、何回でも言うよ!むしろ世界中の皆に言い広めたいね俺は!」
「・・・もう良い」
最低だ信じらんねぇ、人がどんな思いで恥を忍んでやったと思…
「ごめん、茶化して」
「やっ、やだ。もう死んでもヤらねー!勝手にしろ!」
立ち上がろうとする俺の腕を掴み、銀時が言う。白銀の瞳が俺を捉えて放さないから言葉だけは強気に出た。
「ごめん。土方君が許してくれるなら、シたい」
出た、筈なのに
「お前との初めて、やりたいよ…」
どうしようもなくコイツに惚れてる俺は、負けてしまうのは時間の問題だった。
「は、ぁ」
2つ並べられた布団の上。俺達は文字通り、生まれたままの姿。脱がされて脱がして、グダグダのままキスして倒れこんだ。
いつも思うが銀時のキスは激しいけど上手くて、角度を変えたり吸う力を変えたりとで飽きさせず、それだけで蕩けそうで体の奥底がゾクゾクして仕方ない。
「あっ、ぁ、ん」
キスをしながら銀時は手慣れた手つきで俺の乳首を刺激してくる。
どうしたら良いかわからない俺は翻弄されながら、キスの合間に阿呆のように感じるままに声を出していた。
不思議なくらい嫌悪感はなく、ただひたすらに気持ち良かった。
「ンくッ」
「大分勃起してきたね、乳首。良い色」
「はぁ、はぁ、あ」
ちゅぷん、と音を立てて銀時は乳首から口を離す。呼吸を整えながら自分の胸の突起を視界に入れる。それは見た事もない程充血しており、ぷっくりと存在を主張していた。
自分の乳首なのに、女みてぇ…
ボーッとした意識でそんな事を考えていると。
「女の子みたいだね、土方君」
「ッ!」
考えていたのと同じ事を言われ、カアッと顔が熱くなる。照れたのがバレたのか俺の表情を見た途端、銀時はクスリと笑った。
「なーに恥ずかしがってんの。もっと恥ずかしい事すんだぜ?これから」
「べっ別に恥ずかしがってなんか…あぁッ」
さっきからトロトロと先走りを流し始めていた俺の性器を銀時が握るから、思わず悲鳴を上げる。
だがそれよりも更に、驚く事が俺を待っていた。