そうして彼の手を取り俺は、日常に帰った。
とりあえず真選組の奴らに『スンマセン、記憶喪失でした』と謝罪。
まぁ以前に局長が記憶喪失になった事もあってそんな驚かれなかったけど、事情を知ってたっぽい沖田君はなんか冷やかすような目で見てきてた。
アレ。バレてる?俺と土方君の関係。
そんな感じで屯所を出、志村邸に居る新八達に会いに行く。
とりあえず神楽に殴られ、新八にも殴られ、仕舞いには何故かお妙にまで殴り飛ばされたが結局、ガキ共はグズグズと泣きついてくる始末。
ンだよ。それなら初めから素直に再会を喜べっての。
でも結局、兵器として攘夷浪士を半殺しにしてました。なんて言える筈も無いし、とりあえずヤバイ薬を運ばされそうになった、とだけ俺のがしていた事は濁しておいた。
で、スナックお登勢に寄ってみればババァに罵倒され、キャサリンには片言で罵倒され、アレ、俺って戻ってきた意味あった?なんて考えつつも。
「土方様もお登勢様達も、銀時様の帰りを待ってました」なんて、たまから聞かされたから、やっぱり素直じゃない奴が多すぎる、と実感。
…世間は俺が白夜叉として夜に紛れ込み始めた時と変わってなかった。
土方君が言うには俺を恨んでた天人が騙してた天導衆の野郎は、鬼兵隊の河上万斉によって葬らたというけど、それも大して大きな事件になっておらず。
そして終には、呪いの言葉を吐いて自殺した天人の死体も、俺の複製の奴らも海の底に沈んでいったのだと。
そう。俺が関わったものは全て、死によって消え去った。
『亡霊は、在るべき場所へ帰れ』
それでも時々、河上万斉に言われた言葉を思い出す。
目の色も片方だけ元の銀色に戻らないし、何よりアイツ等が死んだからって俺が白夜叉だという事実は変わらない。
俺があの天人の父親を殺したせいで、一人の人生が狂った事も、変わらない。
そう考えると…俺と言う過去からはぐれた亡霊がとり付いているせいで、愛する人々が無惨な死を迎えてしまうのではないかと時々、不安に思う。
けど、俺がここに居るのは俺が選んだ未来で…攘夷戦争の時のようにお膳立てされてこの運命を選んだワケじゃない。
護りたくて、傍に居たくて、笑いたくてその掌を重ねた。
『お前はお前で良い』と、土方君が言ってくれたから。
俺は深い闇から目を覚まして生きる事を、選んだんだ。
「ちょ、銀時。本当にここでヤんのかよ?」
「うん。だって銀さん、今日まで我慢しましたよ」
「いや、だからって何もこんな所でしなくたって…ひうっ」
「あーもーそろそろ黙って」
ベンチに俺は座り、そこに向かい合うように俺の膝を跨いでる土方君。
やだやだ言うその唇をペロリと舐めると、ビクリと体を跳ねさせた。
まぁ、確かに皆との花見を見抜け出してアオカン、なぁんて真面目な土方君は嫌がるだろうけど、でもそれが逆に興奮するっていうか…
「や、待て、だって、誰か人が来たらどーすんだよ」
「だぁいじょうぶだって。知らん振りすりゃ良いじゃん」
「あっあっ、ん、でも、ぉ」
「ごめん。今、他の事考えられる余裕ねーから」
簡単に肌蹴る土方君の着流しの胸元を開き、じゅるじゅる音を立てながらその胸の突起を吸っては舐め、もう片方の乳首を指で弾く。
「ふ、ぁ!」
「お前の身体を前にして、銀さんのアームストロング砲が黙ってられるわけねーだろ」
「ん…」
責任とって、鎮めて頂戴?なんて耳元で囁くとぴくん、と肩を震わす。可愛いなぁなんて考えてると、突如土方君がキスをしてきた。
あら積極的!と声をかけようとすると、随分と濡れた声で土方君は言う。
「へぇ?俺の事しか、今は考えらんねぇって…?」
あー…もう本当、敵わないよコイツには…
「あーそうですよ。今は土方君の事しか考えらんねぇ、よ?」
「は、ぅ、俺だって、そうだよ…銀時の事しか今は考えらんない…」
そう熱っぽく言えば、少し笑って銀時は口付けてくる。
そしてまるで、失っていたものを埋め合うかのように俺は銀時と抱き合った。
皆と花見に来てるのも忘れて。ここが屋外で、公園だというのも忘れて。
ローションも何もないから、自分達で出し合った体液で互いを高め合う。
桜の花びらが舞い、揺れる視界にそれを映しながら俺は恍惚に浸った。
銀時が居る。俺の奥底を揺さぶってる。
もう二度と会えないと…触れられないと覚悟した彼が、俺の身体の中で存在を主張してる。
「あ、っぁ、土方、ぁ」
涙声で俺を、呼ぶ。
あまりの歓喜に思わず涙が零れた。
俺の胸に顔を埋めて突き上げる銀時の銀髪を撫でながら、俺は感じるままに声を出す。
なぁ。前世の俺達も、こうして愛し合ってたのか?
「ふ、ふ。このままガキが土方君の腹ン中出来ちまえばいいの、に」
「んく、ぅ、そしたら名前は、あっ、あぁっ、どうすん、だよ」
「えー勿論?銀歳?」
「オイオイ、女だったらどうする…あっ、んあ!」
叶わない夢物語を口にしつつ腰の動きを早めた。
こんな非現実な妄想を掻き立てさせられる行為の後は、また現実が待ってる。
でも一緒に未来の話でもすれば良い。
だってこの先もお前がまだ、居てくれる。
「あ、銀ちゃん、トッシー!何処に行ってたアルか!」
「いや、ホラね。銀さん達、飲み比べ対決してたでしょ?で、気持ち悪くなってトイレ探してたらこの公園広いからさぁ〜迷っちゃって。ねー土方君」
「へーえ?随分と長い連れションですねィお二人さん」
「…総悟、余計な事言うんじゃねーぞコラ」
…感情は元に戻ったのに、銀時の片目だけが紅に染まったまま戻らない。
いつか彼が近い将来、過去と決着をつける日が来ることを示しているようにも思えた。
それはかつての攘夷志士の仲間か、それとも銀時自身なのかは分からない。
だけど。
「土方くーん!呑み直そうぜ!」
例えばその日が来ても許される限り傍に居て、笑っていよう。彼を護ろう。
絶望の淵に何度も立たされた彼の護りたいものを、護ろう。
もう悲しい思いをさせないように。
「上等だ。今度こそ決着つけてやる」
お前の居ない世界なんて、もう今は考えられないから
EnD.