「また転生郷が出回っているらしい。しかもかなり改良されたモノらしく、依存性が低くなっているようだ」
「へェ」
かぶき町の茶屋でお尋ね者の二人である高杉と桂は、密談をしていた。
深刻そうな顔をする桂とは対照的に、高杉は余裕なのか煙管をふかし続けた。
「…高杉、聴いているのか。天人の不穏が再び江戸を覆っているのだぞ」
「ハッ、俺達が案じなくても、くだらねェ連中共には自然と下るものさ」
「…何がだ」
怪訝な表情で見つめてくる桂を、高杉は鼻で笑い飛ばす。
「当たり前だろ。天誅さ」
* 君の事しか、今だけは*
「あ…ッ!」
押し倒されて体勢が変わり、土方の内部にあった銀時のモノが思い切り前立腺を抉った。
意識が飛びそうな程の快感に、吐息も甘くなる。途端、銀時の性器が膨らんだ。
出される、俺の中に熱いものが。
「ん、ぁぁつ、あ!」
数秒先の未来を想像しただけで土方は射精した。
そしてすぐに期待したとおりに自分の直腸に精液が沢山注がれる。
そう思っていた。
「ち…っ」
舌打ちをして、銀時は達する寸前でズルリと雄を土方の秘部から抜き去ったのだ。
パタタッと音を立てて精液がシーツに染みを作る。
暫くお互い荒い息を繰り返して果てた余韻に浸った後、土方が口を開いた。
「テメ、何で外で出してんだよ…」
「…。
はーい、終了」
「おい、万事屋ッ」
ベッドサイドに置いてあったティッシュを数枚取ると、白濁液で汚れた自身を銀時は拭き始める。
それが気に入らない土方が叫ぶと、冷たい光を瞳に宿した銀時が見つめてきた。
「俺、ゴリと沖田君にお前の事、明日にでも言うから」
「は?」
よいしょと下着とズボンをはいて、ベッドから降りる銀時を土方は腕を掴んで引き止めた。
「言うなって言っただろーが。大体、てめェ依頼人との交渉はどうすんだよ。金ねーんだろ」
「…いい、断る」
やめろ。
土方は心の中で必死に叫んだ。
『全ては真選組の評価に繋がるのだよ、土方』
天導衆に言われた言葉を思い出す。
やめろ。
俺の護りたいモンを全部、ぶっ壊す気かよ…!
「てめェ、ふざけた事言ってるとたたっ斬るぞ!?」
「ふざけた事言ってんのはオメーだよ。もうボロボロじゃねーか。心も体も」
「そんな事ねェ…!」
苦し紛れに答えてしまい、なんとなくそれに銀時も気付いているのだろうと思うと彼の顔を土方は見れなかった。
確かに、精神も体も言われたとおり限界を感じているのは事実。
だが、ここで真選組と引き換えに土方が天人の慰み者になっていると知れば、特に隊員を大事にする近藤は黙っていないだろう。
必死で護ってきたものが、たったこれしきの事で壊されるのは嫌だった。
そんな事になったら、武州に残してきた総悟の姉のミツバや、真選組に尽くすと誓いを立てたあの頃の自分達を裏切る事になる。
だが何よりも、護ると決めた真選組の彼らに、自分のこんな痴態を知られるのは嫌だった。
「万事屋、俺は平気だ。だから言うな」
『憎き天人にこんな風に喘がされて、悔しくないのか土方』
無理矢理体を暴かれて、それをさも土方自身が望んだかのように言われ
『十四郎君、泣かないで。ボクは気持ちよくしてあげるから』
目の前で違法の薬を持っている者がいるにも関わらず、捕らえる事も出来ない。
「まだ、大丈夫だ」
「どこが平気だって言うんだよ、俺にまでサカっといて…」
「…!!頼むから、奪うなっつってんだよ!」
銀時の最もな言葉に、それでも土方は声を荒げた。
頼むからやめてくれ。言わないでくれ。掻き回さないでくれ。
俺がこんなボロボロになって、汚されてまで護りたいものを、奪わないでくれ。
頼むから、俺の気持ちを優しい言葉で包むなよ…!
「…土方君、ごめん。追い打ちかけすぎた」
ベッドの上で項垂れる土方の元に寄り、銀時は膝をついて視線を合わせ、そっと頬に触れてきた。まるで壊れ物を扱うかのように。
「土方君、それでも…もっと自分の為に生きたって良いんだよ。土方君だけが苦しい思いして、それでゴリとか沖田君とかジミーとか皆、幸せになれんの?」
だから、てめぇがそれを言うなよ。俺が護りたいものを知ってる、てめぇが…
「言っただろ。それが俺の役目だ」
「…わーったよ。ったく、お前も俺と同じすぎて気色悪いなコノヤロー」
言って銀時が溜め息をつくも、意味が分からずにキョトンと見つめ返した。
「同じって、何が」
「自分の決めた事は意地でも譲らないって事」
少し困ったような笑みを浮かべた後、頬にあてていた手を、銀時は今度は土方の肩に乗せた。
「というわけで、今度一緒に銀さんとお祭り行きましょー」
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