「あっ!ぁ、ぃや、め…!」
「でも、もう十四郎君のココ、こんなにぐっちゅぐちゅだよ…」
「んんん…!!」
今日は目隠しをされてしまい、視界を奪われて何処を攻められるか分からないという精神的負担が大きい。
両手首は押さえられ、晒された無防備な脇にも舌が這いずり回る。
茂る毛を一本一本舐めるような仕草に加え、土方自身は別の天人に弄くり回されていた。
「は、ぅ、そこばっかり、触らないでくださ、さっ、あ…っ」
「ねぇ、十四郎君、目隠し外して欲しい?何されてるのか分からないの、怖いでしょ?」
この声と口調は、蛸の天人のものだ。彼は言ったとおりの事を強請られるのを好む。
ここ数日間で各々の天人の傾向を土方は大体把握した。
「ね、外して欲しい?ねぇ」
「あっ、う、外して、欲しいです、旦那様…」
「よしよし、今外してあげるね」
「ふざけんなよ、楽しみ削ぐんじゃねぇ」
吸盤のついた手がこめかみ辺りに伸びるのを感じたが、猩々星の天人に阻止されてしまったようだ。一向に目隠しは外されずに代わりにうつ伏せにさせられる。
「ちょっとー!君はどうしていつもいつもボクの楽しみを邪魔するのさ!」
「ンだよ、てめーはもう相当焦らして楽しんだろーが」
背中に圧し掛かってくる重み。このまま入れてくるのだろうが、彼の雄は太く、いつも痛みを伴う。
故に、小さくだが深呼吸をして準備をしなければいけない。
「あっ、ぅ、ああ…!」
「ハッ、どんなに犯してヤっても締まりは変わらないなァ、土方!」
「う、く…!」
容赦なく突き入れてくる重圧を、シーツに頬を擦りつけて懸命に耐えた。
ぐちゅっ、ぬぷぷ!という卑猥な音が土方の鼓膜を犯していく。
ああ、俺は今日も天人の雄に抱かれてるのか…。
「そーいやあの例のブツはいつくんだ?」
「知らない。でも多分明日辺りには届くんじゃない?」
「そーかい。ソイツは楽しみ、だなぁ!」
「あッ、ああ、ん!」
気持ち悪い。土方はそう思った。
女のように喘ぐ声も、痛みが段々快感に変わっていく体も、それに感じて射精する自身も全てが気持ち悪かった。
『軽蔑したりしないよ』
だが、そう言った銀時の言葉が何故か土方の頭をよぎった途端、涙が溢れて止まらなくなくなっていた。
「今日来る時、沖田君に会った」
「へぇ。…アイツ、ちゃんと仕事してたか?」
差し入れに銀時が持ってきたマヨネーズを両手に持ちながら、土方は怪訝そうに訊く。
「なんかねー挨拶したら、『土方の野郎が居ないから真面目に仕事しようと思って』って言われたよ。ちゃんと見廻りしてたし」
「あんの野郎、俺が居る時にもちゃんと仕事しやがれってんだ…痛ッ」
「あ、悪ィ。沁みた?」
ソファーの上で、銀時は土方の背中の消毒をしていた。天人が彼の背中に残した、爪の引っ掻き傷や縄の痕などに消毒液を染み込ませた綿をあてている時で。
「いや、平気だ」
「痛かったらちゃんと言ってよ。…とりあえず、沖田君達は元気そうだったから」
「…」
気になっていた事を訊かなくても、銀時が優しい口調で話してくれた事が、なんとなく嬉しかった。
貰ったマヨを弄りながら、なんとか照れくさいのを抑えて土方は言う。
「万事、屋…?」
「ん?」
「ありが、とう」
「どういたしまして。
…ってえぇぇええ!!?」
土方が礼の言葉を口にしたのが、とても意外だ、というように銀時が叫び声をあげる。
その態度が気に入らず、ムッとしながら土方は振り向いた。
「ンだてめェ。そこ、叫ぶ所か?」
「だだだだだって、あのツンデレ通り越してツンツンで可哀想なマヨ中毒の多串君が俺にお礼いうなんて…!」
「上等だコラ!つかツンデレって何だよ!?むしろ多串じゃねえっつの!」
一しきり突っ込みを入れて反論すると、それを見た銀時がハハハ、と笑い出す。引き続き小馬鹿にされたような態度に相手をするのが煩わしくなった。
プイ、とそっぽを向くとゴメン、と銀時が謝ってくる。
「茶化してゴメンって。でも、そーやってカリカリしてる方がお前らしいなって思って」
「…そんなに違うか?いつもと」
「ま、あくまで普段の俺に対しての態度が、って意味だけどさ」
確かに、いつもの日常だったら絶対に銀時に泣きついたり、精液の処理をさせたり、背中の消毒をさせたり、なんて事はしないだろう。
思い出すと、顔から火が出る程恥ずかしい行為だ。
「…そーかよ」
「そーです」
それでも、と土方は思う。この狂った空間で、銀時の存在は今の土方には救いのようなものだった。