「い、いきなり入れんな馬鹿野郎!なんか掛け声とか普通は…!」
ブルブルと震えながらも土方は叫んできた。
あーもうどうしてこんなにワンコの如くキャンキャン煩いんだろうね。だから幕府の犬とか言われんだよ。つーか掛け声って何?
と一しきり心の中で突っ込むと(口になどしたら、また激しく騒がしい返事が返ってくるに違いない)、銀時はよいしょ、と服が濡れるのも構わずに土方をこちらへ寄りかからせた。
「あー、ぁあ、ごめんね。じゃあ今からね、掻き出しますんで」
「遅ェよ!入れてから言うなクソが!」
「…カッチーン!じゃあもういきまーす、さん、にー、わん」
「おい、なんで1だけ日本語じゃな…い、ん!はぁ…ッ」
指先だけ入れていたのを、クンッと内部に差し込むと文句を垂らしまくっていた土方が甘い吐息を漏らしながら肩口に倒れこむ。
「あ…ッ、いぁ、気持ち、悪ィ…ッ」
「我慢しろよ、指、曲げるから深呼吸して」
「ン…うぅ…」
目をぎゅうっとつぶり、ガクガクして縋るように土方が抱きついてくる。直腸という繊細な内部をなんとか傷つけないようにしながら、銀時は慎重にゆっくりと、吐精された精液を掻き出していく。その度に、土方の肛門近くの湯は白濁に染まり。
「ちょ、土方君。力抜いてって言ったろーが!なんかどんどん締まってきて銀さん、指の出し入れしにくい事山の如しなんですけどォ!」
「し、仕方ねーだろ!ンな事言ったって…んぁあ!」
「うげ」
言い争いをしている間、丁度銀時の指が前立腺に掠ったようで、途端に悲鳴を上げて土方は背を反らして善がり、同時にまたもキュキュッと腸壁が指を締め付ける。
「ひう…も、最悪だ…ッ」
「ごめんって、次は当たらないように努力するから」
やはり、自分と他人とでは同じ男でも具合も位置も違うから慣れた処理も難しい。今度は慎重にやらねば…と銀時が再開しようとすると、肩で息をしながら土方が訊いてきた。
「よろづ…っ屋?」
「なーに」
「お前も、男に抱かれた事、あんの、か」
「…」
「こんな事してんのは、俺に対する同情かよ?」
だから、世話するのが仕事だって言ってるだろ、と言いたくなるのを堪え、違うよ、と銀時は一言だけ呟く。
「そんな事訊いて、そしたら今の土方君の状況、変わる?」
「変わらないけど、でも、っ、は」
前立腺を擦られた事でスイッチが入ってしまったのか、真っ赤になりながらも土方がしがみついて来る。銀時はなんとなく彼の意図を察し、持っていたシャワーを浴槽に突っ込むと、空いた片手で宥めるようにヨシヨシと頭を撫でた。
「…俺だってさ、今の万事屋になれるまでに随分色々な事経験してきたワケよ。汚い事とか、そういうの沢山してきた」
「・・・」
「だから、土方君はね。男に抱かれて自分は汚れた、最悪だ、とかそういうの、考えなくて良いんだよ」
「…ぇ」
驚いたように顔を上げ、涙が滲んだ瞳で土方が視線を合わせてくる。
ああ、やっぱり。とその目を見て案じた通りなのだと直感した。
「軽蔑したりしないよ。少なくとも、俺は」
「…別に、俺は」
「ゴリとか沖田君とか知ってんの?お前がこんな事されてるの」
銀時の言葉を否定するように土方は首を力なく横に振る。
「知ら、ない。俺だってここに連れ込まれるまでこんな事になるなんて、知らなかった」
「…そっか」
「だ、から、言うなよ、この後帰って、その後に近藤さん達に会っても、俺の事」
揺らいだ瞳の力が、急に強くなる。
やはり真選組と引き換えに土方はここで、どこぞの輩共に犯されているのか。もう僅かの量であろう精液を掻き出すのを再び開始しながら銀時は訊いた。
「…頑張るつもりなの、一人で」
「ったりまえだ…、それが俺の役目、だ、ん…ッ」
それから少しの言葉を交わした後に届けられた食事を取り、時間が来たので銀時はホテルの部屋を後にした。
また明日から、彼は屈辱の限りの行為を繰り返されるのかと思うと、どうも後味が悪いが依頼だから仕方ない、深くは関われないのだ、と銀時は言い聞かせる。
だが、『軽蔑しない』と言った直後の土方の泣きそうな顔が忘れられそうにない。
男としての、特に高いプライドを蹂躙された彼が、はたして一ヵ月後も壊れずにいられるのだろうか。
「って、何心配しちゃってんだ、俺は。だから依頼は世話だけなんだってば」
こうして、銀時と土方の妙な一ヶ月間の生活が始まった。