「では、私はこれから仕事があるのでね、退散しますよ。後はごゆっくり楽しんでいってくれたまえ」
土方が抵抗の意思を喪失したのが分かったのか、嫌な笑みを浮かべて背を向けて部屋の扉へと向かっていく。
その後ろ姿を見送りながら、今すぐ刀を抜いて駆け寄って、天導衆のあの男の体をたたっ斬ってやりたかった。
だが、それは出来ない。盾として取られたのは命を掛けて護りたいと願う真選組。
今朝方会ってきたばかりの近藤や総悟、山崎、他の隊員達の顔が脳裏に浮かんで、目頭に熱いものが込み上げる。
「十四郎君って言うの?可愛い名前だね、ねぇ、ボクの事は旦那様って呼んでくれる?」
だが、そんな土方の心境を知らずに先程からペタペタと触ってくる天人が至近距離で語りかけてくる。
彼は天導衆のあの男と友人というのならば、不躾な態度は取れない。
叫びたい衝動をなんとか抑え、声を低くして土方は答えた。
「…あ、の。失礼とは思いますが、俺は男です。旦那様はお気に召されないと思いますが」
「そんなつれない事言わないでよ、十四郎君。もうね、ボク達、人間の女は飽きたんだ」
気安く名前を呼ぶな。大体、飽きたってコイツら、人間の女を何だと思ってるんだ。
心の中で土方がそう思っていると、突然別の天人が今まで土方に触れていた天人を突き飛ばす。
「くっだらねー会話は良いからよ、とっととおっ始めようぜ」
ソイツは毛むくじゃらのゴリラのような姿をしており、確か猩々星の天人だ、と土方は記憶の中から弾き出す。
だが刹那、首もとのスカーフを解かれて思わず息が詰まった。
「…!?」
「あぁぁ、何するんだよ、ボクが優しく脱がせてあげたかったのにぃぃ」
蛸の天人が『ひどいよひどいよ』と文句を言い始める。それを『うるせぇ』と叱咤する猩々星の天人、という光景を見ながら、自分の身にこれから起きるであろう展開に血の気が引いた。
犬、というから屈辱的な事をされるだけだと思っていた。
屈辱には耐えられる。痛みにでも。
だが、きっとこれから行われるのは、輪姦。
女に飽きたとは、そういう事か――…!!
思わず逃げ腰になる土方の足首を猩々星の天人が捕らえ、己の方に引き寄せた。そして露わになった首筋を大きな手で掴む。
「そう化け物みたような顔すんなよ。楽しんでヤろーぜ?」
「や、め」
小さく悲鳴を上げる土方を無視し、彼は中に着込んでいるベストとシャツを一気に引き裂いた。