「は、ぁ」

そしてゆっくりと侵入してくるモノに全身がゾクゾクした。
無理矢理開かされた穴が痛くて仕方ないのに熱は興奮に変わっていく。

「ンッ!」

「やべ、副長さんのナカ、超あったけー…」


そう言った南戸の吐息が背中にかかり、ビクンと身体が痙攣した。
全ては麻痺して全身が性感帯になってしまっている。


「つぅかこれ、北大路が先に動いた方がいいんじゃね?さすがに」

「…そうだな…」

「やぅ、は、ぁあッあ…」


前からも後ろからも2本の性器で攻められ、普段なら達してしまいそうな快感にも関わらずまだ一度も射精出来ておらず、空イきだけだ。
ローターできつく縛られた俺自身はキツそうに膨張し、しかも揺すられる度に北大路の腹で擦られて。


「ぁ、やぁ、ろ、ローター外し、やがれ、」

俺の秘部からぐちゅっぐちゅん、という音が鳴り続ける。
今自分の穴が二人分の男の雄を銜えているというのを想像すると
発狂しそうになるのを俺は細い糸のように繋ぎとめた理性で堪えた。


「なァに言ってんかねェ、こうやって弄られるの好きなんだろ?ん?」

「ッ!!」


更に背後から南戸が俺の脇の下から手を伸ばして前に触れてくる。
ひどい刺激に目の前が真っ白になった。


「調教されるのが好きな犬か…大した副長だな、貴様」

「や、ゃあ!動くな北大路、テメ…ひッ」


北大路の長いモノが俺の奥を抉り、南戸が後ろからイく事を許されない俺自身を扱いてくる。
喘ぎすぎて喉が焼けるように痛い。
それよりも狂った脳は早く達することを望んでいて。


「や、やめ」

「土方さん、可愛くオネダリしてみたらどうでさァ」


今まで黙って事の様子を眺めていた総悟がそう言って微笑んだ。
彼は救いの手のどころか、更にどん底へと俺を突き落としてくる。

「イかせてください、って、ねェ?
そうしたらそこのお二人さんだって、
土方さんが服従した事を認めてイかせてくれるかもしれませんぜィ」


ふざけるな。

俺がそんな事を出来るわけがないし、俺のそんな性格を総悟は知っている筈。
そう、アイツは知っていてワザとそう言う。
俺に屈辱を味あわせる為に。


「そんな事…ィあん!」

「北大路ィ、鬼の副長さんが尻尾振ってオネダリだってよ。どー思う?」

「…まぁ少しはイかせてやる事を考えてやってもいいだろう」


イけれる、とい期待が本能を突き動かして更に俺の中心に血が溜まっていく。
もう限界だという事を伝えたいのか、涙が頬を濡らしていった。


「い、イかせろ…うぅッ」

「貴様、そんな強請り方で良いと思っているのか?」


消え入るように搾り出した言葉も、北大路の突き上げに掻き消されてしまい。


「せめて、『イかせてください、北大路様』くらい言ってくんねェとなァ?」

「…趣味が悪いぞ、南戸」

「は、ァ…あんっ」


目の前がグラグラした。どうしようもなくて、
身体が震えて、北大路や南戸が何か言ったり
俺の身体を撫で回したりしていたようだが
もう殆ど意識は飛んでいた。

イきたい。

俺の頭はそれだけで、思考回路もそこへしかもう行き着かない。
リアルに感じるローターの振動音が、
心臓の鼓動よりも近くで聞こえたような気がした。


「っ、ひ、…イか…せ…」

「あ?」


擦れつつもなんとか声を出したが、相手には聞こえなかったようで南戸が聞き返してくる。
普段なら赤面ものだが、羞恥心などとうに崩れた。


「イ、 かせて、くださ…ぁッ、い、うぅ…」

「なんだ?よく聞こえないぞ副長さん」

「うぁああ!」


北大路の性器の出し入れが更に激しくなる。
そろそろ向こうも限界なのだろう。
俺はふるふると黒髪を振りながら精一杯甘えるように相手の肩に手をかける。

「ホラホラぁ、言わなきゃいつまで経っても終わらないぜ?」

「ひぅ、ん、北大、路…さ…ふぁ!」

まるで俺が言うのを阻止するかのように南戸は俺の前を弄ってくる。
そしてねっとりとした口調で背後から耳元に囁きかけてきた。


「副長サン、いつも沖田にヤられてる時みたいにおっきな声で甘えてみなよ」


総悟の名が出て無意識にボロリと涙が零れた。
その頬に伝った涙をすくうと、その指を俺の口に突っ込んで舌に塗りつけてきた。


「はぁ…、ん」

「そろそろイきたくて仕方ねェんだろ?」


コクンと頷くと、ハッと鼻で笑われた。


「いぃいんらぁあん。だったらさっさと強請れって言ってんだよ!」

「なに、あっ!いやぁあ!!」

突然口から指を引き抜いたかと思うと、
南戸は俺の腰を掴んで北大路と同じように突き上げてきた。
舌を突き出して悲鳴に似た声を俺は漏らす。


「キツ…」

「いぁあ、やだぁ!」

「ちっ…全身男性器が…」


ぬぷぬぷと二人の性器が俺のナカで交互に出し入れされ、擦れ合った。
もう本当に限界が来て、理性の糸が何処かでプツリと切れる。


「はひ、イか、イかせてくださ…」


ぐちゅっぐちゅっ

その音が俺の五感全てを支配した。


「イかせてください、北大路様ァ…ッ!!」


眼鏡の奥の切れ長な北大路の目が俺を真っ直ぐに見つめ、律動を止める。
そして俺の股間に視線を向けると手を伸ばしてきた。

ああ、やっとイける。

期待感に胸が弾み、思わず笑みさえ零れた。

しかし。


「残念だな、土方。却下だ」

「え…?」

視界には更に俺の性器を縛る北大路の指。
信じられなくて思わず総悟に目を向けると
アイツは変わらず楽しそうに指を噛んで、焦る俺を只嘲笑していた。

その表情に全てを裏切られたような気がして、俺は気が狂ったように暴れた。
きっと最後の抵抗になる事を知りながら。


「くそ…クソ!畜生、もういやだ、いやだぁああ!」

「ちょ、副長さん、そんな締めたら…ッ」

暴れたせいで俺のアナルに力が入ったのか、苦しそうに南戸が呟いてくる。
そんなのも構わずに逃れようと両手をばたつかせ、しかしそれも北大路に掴まれてしまう。
相手ももう達する寸前らしく、普段のような余裕の表情は無かった。


「そんなに暴れるな。俺のを喰いちぎる気か…ッ」

「やだ、離せ!あっ、言ったら、イかせるって言った、くせによォ…ッ」

悔しくて悔しくてボロボロ涙を零して抵抗しても、
只腰を振って相手を射精に促す動きにしかならない。
前に位置する北大路のモノが膨らむのを感じた。


「…中に、出す、ぞ…」

「ぃあぁあ…!」

せめてナカに出されるのは避けようと腰を浮かせたが、
それも空しくすぐに深く挿入されてしまう。
もう間に合わない。
北大路のモノが弾ける。
ぶるっと震え、俺の名前を呼び、手首を掴む掌に力がこもった。

「やぁ、あつ、ぃ…ぁぅ」

「く、土方、ぁ…」

ドクンと波打って熱い飛沫が体内に吐き出されたのが分かる。
張っていた力が全て抜け、
放った余韻にひたって仰向けに倒れた北大路の上に俺は倒れこんだ。

「ん…ッ」

しばらく荒い息を繰り返していると、
北大路のモノがアナルから抜けていくのを感じて甘い声が漏れてしまう。
しかし少しの休憩も与えられずに
両腕を後ろの方へ引っ張られて上半身が起き上がらされた。

「おっとォ、まだ俺が終わってナイぜェ、副長さん」


鼻歌雑じりに南戸は北大路の身体の上で、俺を四つん這いの格好にさせた。
相手の性器が動く度に放たれたばかりの北大路の白濁液が、
コプッと音を立てて逆流する感じがなんとも気持ち悪くて喘ぐ。


「やっぁう、ひ…」

「やべ、ちょ、滑りよすぎじゃね?コレ…」

南戸がバックから俺を突く度、シャラシャラとネックレスの音が鳴る。

「あっ、あっぁ、あん、ぁ!」

その動きに身を任せていると北大路が
俺の髪を引っ張って眼前に自身を突きつけてきた。
どうやら舐めろという事らしい。
もう何かが壊れてしまった俺は、怖じしも無く長いソレに舌を這わせ始める。


「ぴちゃ、ん、んぅぅ…ッ」

「クク、大分従順になってきたな、生徒会の犬が…」

馬鹿にしたように言いながら北大路が俺の頭を撫でてきたが、
構わずにソレを舐め続けた。
もう屈辱の行為も言葉も、イく事もどうでも良かった。

思考は性に溺れた。
山崎に犯された時に俺は既に、壊れていたんだ。

だって今、壊れそうな程気持ちいい。








「気持ち良さそうに笑ってまさァ、土方さん」


3人の淫行を見ながら総悟は笑った。
そろそろ土方の性感も麻痺してる頃合だろうから。


自分にしては随分と我慢した方だな、と総悟は思う。

目の前で土方が北大路と南戸に無理矢理犯されている様子は確かに興奮するものがあったが、
やはり自分の声や行為で彼を鳴かせて善がらせ、可愛がる方がよっぽど楽しかったからだ。

それでも涙目で、涙声で自分に助けを求めてくる土方の姿は酷くそそられた。
可哀相で、そう。

可愛そうなくらいが、総悟に至高の喜びをもたらしたのだ。


「ひぁ、ぁ…」


もう何度目か分からない土方の鳴き声。もうその声は殆ど擦れていた。
やがて犯し終えたのか、彼に覆いかぶさっていた男達が衣服を整え始めた。



「…満足して頂けましたかィ?柳生四天王のお二人さん♪」

「満足っつーか、それ以上だったけどよォ…」


取り出したケータイを眺め、乱れた髪を梳きながら南戸は言う。


「マジでこれ良かったワケ?初めの方、副長サン…マジで嫌がってたぽかったけど」

「ああ、別に平気でさァ。この人が選んだ事なんで」


ニコリと総悟が笑って見せると、
ああそう、ともう興味を失くしたように南戸は薄っぺらい鞄を持ち直し『帰ろうぜ、北大路』と連れを促す。
黙々と制服を着込んでいた北大路も荷物を持ち、総悟と視線を合わせた。


「不器用な男だな、貴様は」

「…何のことですかィ」

「心当たりがないならそれまでだな。帰るぞ、顔面男性器」

「だからどの辺が!?つーか最後までそれかよ!」


言い争いをしながら教室から出て行く二人を眺めながら、総悟は舌打ちをした。


「気持ちい思いさせてやったのに、俺に意見かますたァ良い度胸ですねィ」


そう吐き捨てると、彼は土方の鞄を探って携帯電話を取り出した。
先程から着信を示すランプが光っているのが隙間から見えて気になっていたのだ。
折りたたまれていた携帯を開くと、着信履歴が3件ほど。
電話をかけてきた主は、初めの一件が近藤、その後が山崎だった。


「はは、愛されちゃってますねィ、本当」


パチンと閉じてズボンのポケットに突っ込むと、床に転がされたままの状態にあった土方に歩み寄った。
接近しても微動だにしない。



「土方さーん。もしかしてイっちゃってます?」


しゃがみ込んで、南戸のせいで若干湿っている髪に触れて撫でる。
すると、意識を取り戻したかのようにビクンと土方は身体を硬直させた。


「ひ…ッ」

「ああ、もしかしてこんな刺激でも
今の土方さんは感じちゃったりするんですかィ?」

「え…?総、悟…?」


身を捩じらせて逃れようとしていたが、どうやらそれは総悟は北大路か南戸だと勘違いしたからだったようだ。
顔射もされたのか、白濁液と涙でベタベタの顔で土方は見上げてきた。
焦点が虚ろで合っていない。


「も、ダメ、いやだ」


力なく首を振って土方は身を丸めて縮めこませる。
そんな彼を宥めるように総悟はその黒髪を優しく撫で続けた。


「平気でさァ、土方さん。あの二人はもう帰りやしたぜィ?」

「・・・」


だが、頷きもせず、無反応。応答も出来なくなる程良くされたのか、と思いながら総悟が顔を覗き込もうとすると、それを嫌がって土方は両手で顔を覆う。

心外、というように総悟は肩をすくめた。


「土方さん、どうしやし…」

「お前、俺にこんな事しといてどういう態度だ」

「えぇ?」


彼の言葉を遮って、感情の篭らない調子で土方が言い
予想外の反応に驚きながらも問う。


「こんな事って?」

「…テメェ…ッ」


顔を隠していた両手を外し、睨みつけようとするその顔を総悟は無理矢理掴んだ。


「ああ、ハメてあげた事ですかィ。そんな、お礼なんてイイですって」

「は!?誰が…!」

「だって土方さん、ものすごーく気持ち良さそうに笑ってましたぜィ?
北大路のとか嬉しそうにしゃぶってやしたし」

「…ッ!」


悔しそうに土方の目が涙で潤む。だが、決して限界まで流さないその高いプライドも総悟は大好きなのだ。
それが壊れる瞬間が楽しくて仕方ないから。
完全に崩れた時、彼がどうなるのかも楽しみの一つであった。


「違ェ、あれは…!」

「ね、土方さん。アンタ、やっぱりドMなんでさァ。苛められて喜んじまう」


身を持って識れたでしょう?と笑みながら小首を傾けて顔を近づけた。


「気持ちがなくてもヤれちゃったでしょ?いっぱい感じちゃったでしょう?」

「違う、違う…!!」


相手の精神を追い詰めながら、早く壊れちまえばいいのに、と総悟は思考の端で思う。


お高いプライド、捨ててしまえば最高に幸せな夢が見れるのにね。


そんな事を考えながら、なんとか目を逸らそうと必死の土方の耳に唇を寄せた。

「本当は、俺の知らねェ所で山崎以外ともヤったんじゃねェの?」

「な、に…?」

「近藤さんとか」


絶望に満ちた表情で土方は見つめてくる。
彼が近藤と身体を重ねてなどいない事を、性感が繋がっている総悟は身を持って知っていた。

第一、志村妙に一途で土方を大事な親友と思っている近藤が彼を抱くはずが無い。
それを承知の上で総悟は言う。
理由は、勿論たった一つだけ。



「志村妙の代わりでいいから、とか言って迫ったんじゃないですかィ?」




楽しいから。




「総悟…ッ!!」


バシン、という音が教室に響いた。土方が総悟の横っ面を思いっきり叩いたのだ。
荒く息をする土方を、『痛ってェなぁ…』と呟きながら見つめる。



「てめェ見損なったぞ!近藤さんの事まで言うなんてなァ…!」

「あらら、そうだったんですかィ?
俺の事なんて、もうとっくに見損なってたのかと思いやした」


すっとぼけたように言うと、今度は堰を切ったようにボロボロと土方が涙を零し始める。
こんなに涙腺弱い人じゃなかったのに、もしかして本当に壊れちまってるんかねェ、と
思いながら総悟が手を伸ばすとまたもやパシンとはたかれた。


「何すんでィ」

「ああ、そうだよ、見損なってたぜ、本当ならとっくにな…!」



グシッと涙を腕で拭き取る様まで可愛いくて苛めたくなる、という思考回路の方が壊れてるんじゃないかとぼんやり考える。
そんな総悟の事など知らない土方は擦れた声を張り上げて泣いた。


「でも、お前は近藤さんの事、信頼して好いてたから…!
だから、そこだけは認めてやってたのに、でもお前はそれすら裏切った!」


ああ、やっぱり近藤さんが一番なの、土方さん。

確かに俺ァ近藤さんの事、大好きです。
こっちの星に来て一人ぼっちだった俺に声をかけてくれたあの人を、
風紀委員にいれてくれたあの人を…
アンタを俺に紹介してくれたあの人が大好きでさァ。

でも、それとこれとは、別。
アンタの心を縛る人間は誰であろうと許さない。
それが近藤さんでも、利用しますよ、俺は。

ねぇ軽蔑しやす?土方さん。


「裏切っただァ?それを言うなら初めに山崎に身体開いて、
アンタが俺を裏切ったのが先でしょう?土方さん」

「…確かにそうでも…俺がお前に協力するって約束破ったのは俺が先かもしんねェけど、
でもそれは、お前が近藤さんの事だけは絶対に、
そういう風に言わないと思ったからだ…!」


ああ、またイライラしてきた。

いっつもいっつも近藤さん。
今朝だって、俺が来た事や挨拶に気づきもしないで近藤さんの背中、目で追いやがって。
それでいてレイプした山崎の野郎の事も庇おうとしやがる。

どうして、なんでだ。


『不器用な男だな、貴様は』


ドMのくせになんでドSの俺の思い通りに動かないんだよ、アンタは。

「なのにテメーは…」

「へェ?じゃあ契約、破りますかィ?」

「ひ、あああっ!!」


まだ達していない、コードでがんじがらめにされたままの土方自身を総悟は笑みを浮かべながら握った。
感情が高ぶって無防備になっていたソコを掴まれ、あまりの刺激に土方は髪を振った。


「やめ、ん、やめろ、ぉ」

「別に俺は構いやしませんケドねェ。
アンタと山崎が明日からこの街歩けなくなるだけですし。
さすがの近藤さんも、土方さんが男に犯されてる音声なんて聞いたらヒクんじゃないですかィ?」

「…下衆野郎…ッ」

「はは、最高の褒め言葉でさァ」


涙ぐむ土方の脚を大きく開かせると、
中出しされた精液が逆流してコポコポと音を立てて噴出してくる。
赤く腫れたソコを撫でながら、総悟はズボンから土方の携帯電話を取り出した。


「この星って便利ですねィ…テレビ電話とかいうシロモノがあるなんて…」

「総悟…?まさかてめぇ、近藤さんに…ッ!」

「はは、そんな筈ないでしょう。近藤さんだったら、俺のケータイからかけまさァ」

言い、土方の携帯電話を弄り始める総悟。
じゃあ誰にかけるつもりなんだ、と土方が思考を廻らせていると、
あ。あったあったと総悟は言ってきた。


「山崎退、とか律儀にフルネームで入れてるんですねェ。
ジミーとかにすりゃあいいのに」

「オイ、やめろ返せ…!」

総悟の手から奪おうとする土方の手をヒョイといとも簡単に総悟はよけると、通話ボタンを押して土方の顔面に突き出して見せつけた。


「野郎、絶対ェ俺からの電話じゃ出なさそうですし、
アンタのケータイからかけさせてもらいやした。
勿論面と向かって話せるようにテレビ電話で」

「ふざけんな、山崎を巻き込むのはよせ…やあ!」


阻止しようとする土方の自身を軽く踏み潰す。

達せずにいたソレはその刺激だけで大きな快感をもたらし、
土方の身体の力を容赦なく奪った。
弛緩した手足が空しく空を掻く。


「土方さんて学習能力ないんですかねェ?
今朝も俺にローターを入れられた時にロクな抵抗出来なかったくせに」

「総悟…やめ、もう許して…!」


土方がそこまで言いかけた所で、携帯電話の呼び出し音がプツリと切れ代わりに山崎の声が慌てた様子で聞こえてきた。


『副長!?もうどうしたんですか、無事に帰れました!?というかなんでテレビ電話…』


山崎の声を聴いた瞬間、何かが切れたかのように全身から一気に力が抜けた。理由は分からないが、もう本当に何処へも戻れないのを感じて。



『どうしたんですか…その格好…?』


恐らく、このボロボロに犯された姿を見て山崎は愕然としているのだろう。
恐ろしくて携帯電話の方を見れない土方は、顔を背けながら叫んだ。


「頼む、から見るな…!山崎、今すぐ電話、切れ…!」

『ふくちょぉ、まさ、まさか沖田君が』

「人聞き悪い言い方しますねィ。俺じゃないでさァ」


会話を遮るように総悟は割って入ってきた。
泣き喚きたい気持ちを懸命に堪えながら土方は
床に這い蹲りながら散らばった制服をかき集めるために手を伸ばす。


『沖田、君。アンタなんで…』

「山崎ィ。お前、柳生四天王って知ってるよなァ?
そこン所の二人に土方さん、ヤられちまって」

『…嘘を言わないでください。
アンタに話をつけに行く為に、副長は教室に戻ったんですよ』


総悟は今すぐこの携帯電話を真っ二つに折ってやりたい衝動に駆られた。

どいつもコイツも俺の事を嘘つき呼ばわりしやがって。
ああ、またイライラがつのっていく。

むしろ話をつけに来たってどういう事だ?

まさか土方さんは、本当に俺との契約を破棄しに来たっていうんだろうか?

違う、違う、土方さんは俺を選んだんだ。

近藤さんでもなく、山崎でもなく、俺を選んでくれたんだ。

…違う、そもそも考えの根本が間違ってる。

俺が選んでやったんだ。

本能的に弄られたくて仕方ないあの人を、俺が選んでやったんだ。


俺が捨てるならともかく、あの人が俺を捨てる筈が無い。

そうでしょう、土方さん。

なのにこの俺の余裕の無さはなんだ。


『やっぱり一人で行かせなきゃ良かった…副長、待っててください、今助けに学校へ行きますから…!』

「待て、山崎」


電話から聞こえる山崎の言葉にハッと総悟は我に返り、通話を切ろうとする彼を引き止める。
そして制服に手を伸ばそうと必死の土方をの肩を抱き起こした。


「や、離せ…ッ」

「お姫様を救いに来る白馬の王子様気取りたァ良いご身分だねィ、山崎」


もう動く力も残されていない土方の首筋を総悟は舌先で見せ付けるように舐め上げる。

この場へ来させやしない。
お前はここでこの人に別れを告げられるんだよ。
一時の夢を見させてやっただけありがたいと思え。


『…なんとでも俺の事は言ってくれて構いませんよ。
でも、昼休みに教室で言った通り俺は、アンタから土方さんを守ります』


山崎の言葉に、ヒクリと身体を揺らす土方の姿が視界に入る。

…マズイ、このままでは本当に土方は彼に助けを求めだすかもしれない、と
総悟に僅かな焦りが生まれ始めた。

普段の意地っ張りな土方の性格を考えたら、特に山崎には絶対に助けなど請わない筈だ。
だが今は北大路と南戸に犯されて精神はイってしまい、崩れかけている。

言うかもしれない。

助けて、山崎。と

焦った総悟は最後の切り札として、念をおすようにローターに仕組んだ盗聴器に
録音されている情事中の会話の事を土方に耳打ちしようとした時だった。
静かに、彼はそれより先に口を開く。

「俺を守る?てめェ馬鹿か、山崎」


総悟は驚いて土方を見る。
きっと携帯電話のディスプレイ越しに山崎も同様の表情をしているのだろう。


「思い上がるの大概にしやがれ…一度、お前の欲を受け入れてやったくらいで良い気になるな」


不敵な笑みさえ浮かべて、土方が鼻で笑う。


「総悟も言ってただろ?俺ァ北大路や南戸とも喜んでヤるような男なんだよ。
てめーも俺の欲望を満たす只の一人に過ぎねー」


違うでしょう。

思い通りの台詞を土方が言い、このままいけば思い通りの展開になる筈なのに総悟は必死で彼の言葉を頭の中で否定した。


「お前の助けなんか、いらねー。知ったこっちゃねーんだよ」


違うでしょう、土方さん。なんでそんな事言うんですかィ。

ここで山崎に助けを求めちゃえばいいのに。
アンタだって馬鹿じゃないから分かるでしょう。
土方さんを脅す、このローターをぶっ壊しちまえば、もう自由になれる事。

近藤さんにも山崎にも俺の正体バラしちまえば、それで俺達は終わる事。


「だから、山崎。お前が総悟をとやかく言うのはお門違いなんだよ」


なのになんで

「悪く言うなら、…お前を利用した俺の事を言え」

なのになんで、そんな言い方するんでさァ、土方さん。


呆然とする総悟を前に、土方は言い切った。
同じように絶句していた山崎だが、負けじと声を張り上げて反論する。


『副長、強がるのはやめてください!アンタ、沖田君に怯えてたじゃないですか!』

「…うるせェな。演技だ。あんなのは、てめェを騙す為の。」

『そんなの…!
でも俺、副長への気持ち、変わりません。
いくら俺の事利用してたとしても、良いです。
だから、助けに…』

「うるせェ、助けなんざいらねぇって言ってんだろ!!」


土方の擦れた怒声が教室の中に響き渡る。
上の空でいた総悟は思わずビクっとさせて我に返させ、気づかせる。

今こうして喋っている事が、彼の演技なのだと。

山崎を失望させる為の。

そうして総悟へ怒りの矛先が向かないようにする為の。


「…俺の事が好き?だから守りたい?利用されても助けたい?
上等だ、コラ」


言いながら、泣きそうな微笑みを向ける土方を総悟は見た。


「そんなに俺が好きなら、黙っていう事聞けや。
 …馬鹿野郎」


『ふくちょう…!』


まだ何か言いたげな山崎の言葉を遮って、
携帯電話に手を伸ばした土方が電源を切って通話を切った。
ツーツーと切られた事を示す音が聞こえる。

静かにパタンと電話を畳むと机の上に置き、
全ての力を使い切ったかのようにうな垂れてしゃがみ込んだ。
総悟は、その様子を信じられない気持ちで見ていた。

思い通り、土方が山崎に別れを告げたというのに。


「土方さん」


呼んだ声が無意識に震える。


「アンタ、なんで」

「…」

「なんで山崎に助け求めなかったんでさァ」


俺を庇うような言い方までして、と付け加えたかったが何故か言葉にならなかった。


「…何の話だ」

「分からない人だな。
土方さん、俺を見損なったんじゃなかったんですかィ」

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