「もう俺に近づくんじゃねぇ!他に男ならいっぱいいんだろ!?」
ガツンと鈍器で頭を殴られたような。
例えばそんな感覚に陥って何も総悟は言い返せなかった。
そんな彼を涙目でギッと土方は睨むと、鞄を肩にかけて背を向けて駆けて行く。
追いかける事も、その後ろ姿に脅しの言葉をかける事も出来たのに、
出来なかった。
土方の“近づくな”という言葉と
心底嫌悪した視線に身体が凍って、立ち尽くす。
どうしてだろう。思ったよりも、ショックだ。
「あれ・・・?」
可笑しいな。サディスティック星から来たと言うのに
この打ちひしがれた気持ちは何だろう。
土方の言う通り、彼でなくてもマゾな男なら沢山その辺にいる筈だ。
だから落ち込む事なんかないのに。
それなのに、自分の事情を土方に打ち明ける前の関係に
戻りたいと思うのは何故だろう。
「トシぃ〜!
今日もお妙さんを校門で待ち伏せてたのに会えなかった…!!」
Z組の担任である銀八の気だるい朝礼が終わった途端に、
幼馴染でもあり同じ風紀委員でもある近藤が
土方の机の上に突っ伏して泣きついて来る。
土方は溜め息をつきつつも、親友とも呼べるそんな彼の肩をポンと叩いてやった。
「近藤さん。恐らくアンタの行動パターンは読まれてる。
次は裏門で待機したらどうだ」
「おお、そうか!さすがは風紀委員の頭脳だなァ、トシは!」
本当は教室で近藤の想い人である志村妙を待ち伏せる方が得策なのだろうが、
さすがにストーキング行為をされている妙も不憫なので
そちらの助言はしないでおいた。
「んん?そういや総悟はまだ来ていないのか?」
ティッシュを取り出して涙と一緒に出た鼻をチーンとかみながら、
教室を見渡して近藤が呟く。
確かに、土方の隣の席である総悟は来ていない。
普段、朝礼が終わったら真っ先に土方に
ちょっかいを出してくるのは総悟だ。
故にただ、彼がいないというだけで土方は
肩の重荷が降りたかのように清々しい気分になる。
「そういや、あの真面目な桂も来てないな。遅刻者続出か?」
そんな土方に対して、心配そうに近藤は
”それとも総悟も桂も体調悪いのか?”
と真面目に首を捻る。
先程まで好きな女に会えなかっただけで自分に泣きついてきた彼とは違うその横顔になんとなく見惚れる。
そして、心底、思う。
“ああ、やっぱり好きだな、この人の事”
敬愛にも似た幼馴染への土方の想いは、昔から変わっていなかった。
傍にいるだけでとても安心できるし、素直になれる。
だから、この銀魂高校に入って一年の時。
クラスが分かれた近藤から初めて総悟を紹介された時は
正直、ショックだった。
『トシ!クラスで仲良くなった沖田総悟だ!』
そう言って笑う近藤の横で、あの時総悟は只黙って、土方を見上げていた。
小柄な身体と端整なツラが、
自分と同じ学ランを着ているにも関わらず
少女のような印象を受けさせた。
が、それも本当に初めだけで。
『よろしくおねがいしまさァ、土方さん』
土方の何かを見抜いたかのように妖しくほくそ笑むと、
ペロリと彼は己の唇を舐めて。
そう、獲物を狙う狼のような、男の表情を――
「あっ!トシぃ!
ちょ、お妙さんがトイレへ行くようだから俺も行ってくる!」
「え?あ、あぁ」
普通はそんな大声で堂々とストーキング行為を
しようとする親友を止めるべきなのだろうが、
記憶に考えを廻らせていた土方は上の空のまま思わず受け応えをしてしまった。
そんな彼を知る由もなく、近藤は彼女を追いかけて教室からバタバタと出て行く。
「はぁ…」
風紀委員長なのに、あんな風紀を乱す大将でいいものなのかと、
なんとなく溜め息をついてから、再び総悟との出会いを思い出す。
否、思い出そうとした時だった。
「土方さん、溜め息たァ恋の悩みですかィ?」
「うおぉ!?」
独特な言い回しの語尾をつけて言葉を放つ総悟が
突然机に顔だけを乗せて現れたものだから、
驚いた土方は危うく椅子ごとひっくり返る所だった。
土方のあまりの驚きように大きい瞳を瞬きさせて
”なんでィ?”と小首を傾げてくる。
こういう仕草だけを見れば、
沖田総悟という少年は可憐という形容がかなり似合う男なのだが。
「ビックリすんじゃねェか!
突然そんな所から出現すんな!!」
「突然じゃないでさァ。
俺が隣に来て鞄置いて、挨拶しても気づかないから
目の前に来ただけですぜィ」
言い、総悟は立ち上がる。
”また”何かをされるのではないかと
身構えて緊張を走らせていた身体を土方はホッとして緩めた。
「…俺が来た気配とか分かんねェくらい、何を考えてたんですかィ?」
だが、低いトーンで話す総悟に、ビクリと全身が萎縮する。
ドクドクと鼓膜の近くで鳴る心臓。
周りのクラスメイトは自分達が話すのに必死で土方のそんな変化に気づく由もなく。
「あんな、教室を出て行く近藤さんの背中を目で追って」
見下ろしてくる総悟を、土方は顔を上げて見つめ返す事が出来ない。
「俺の挨拶が聴こえないくらい、考え事して…」
ギシッと音が、机が軋む音が聞こえた。総悟が机に、両手をついたのだ。
「溜め息ついちゃうくらい、何を考え事してたんでさァ?」
「そ、れは」
思わず言葉を紡いで顔を上げてしまう。
すると、ニッコリとまんべんの笑みを浮かべた総悟と視線が絡む。
”ヤバイ”と思ったのもつかの間
「こっそり、俺に教えてくだせェ。…誰もいない所で」
「や、待て、そう…うぁ」
総悟の圧力に負け、結局教室から連れ出されてしまった。
しかも、その場所というのは
”出る”と噂される校舎の端に位置するトイレ。
よっぽどの物好きでない限り、滅多に誰も近づかない。
男子トイレに入るように促され、なんとなく恐怖を覚えて躊躇うも
突然臀部を揉まれて土方は呻く。
「静かにしなせィ。
別にアンタを全裸にして女子トイレに放置したってイイんですぜ?」
シーと人差し指を口に当て、さも楽しそうに総悟は言う。
まるで、そっちの方が俺としては満足のいく選択肢、と
言っているかのように。
「テメ、ふざけんな」
「はいはい。文句は後で聞いてやりまさァ」
扱い慣れたかのような言い方で、
そのまま奥の個室へ総悟は土方を押し込んだ。
狭い場所なので自然と土方は便器に座る形になり、
総悟はその前で後ろ手に鍵を閉めた。
カチャリ、という音がジメジメとしたトイレの静寂の中に響く。
再び妖しく笑む総悟に見下ろされ、
助けに来る筈もない近藤に土方は思いを馳せた。
「…総悟。確かに挨拶に気づかなかったのは悪かった。でも」
「あー、待ってくだせェ、その前に…」
口を開こうとする土方にストップ!と手をかざし、
そのまま制服のズボンをゴソゴソと探る。
そして差し出された物体に土方は度肝を抜かれた。
「コレ突っ込んでから聞くんで、はい。尻出せ土方コノヤロー」
「うぉおおおおいい!!待てやクソガキャァアあああ!!!」
怒りを前面に突き出して、
総悟の掌にある物体を物凄い勢いで奪おうとする土方の手を
ヒョイと避けて、涼しい顔で答えた。
「へい、10秒待ちやす。何でさァ」
「なんでさァ、じゃねェ!てめ、なんつーモノを学校に…!!」
かわされた拳をフルフルと震わせ、土方は喚いた。
総悟が出してきたのはローター。
きっと彼の魂胆からして、ソレを肛門に入れるつもりなのだろう。
冗談じゃない。
「ああ、土方さんはローターよりケツバイブの方がお好みでたかィ。
でもアッチは何気にデカいから鞄に入らねぇっつうか…」
「Σいや、何の話をしてやがんだよテメーは!!」
「土方さんが、回る玩具の方が好きって話〜」
「違ェだろ!?いつ俺がそんな話をしましたか!」
きょるん、と愛らしい効果音が聞こえてくるような微笑みで(しかも小首を傾けるオプションつき)土方を見下ろしてくるが、それに騙されたりはしない。
バッと大げさなくらい総悟に向かって出した。
「おい、とりあえずそれ貸せ」
「えぇっ!土方さんが自分で入れてくれるんですかィ!?嬉しさで思わずでちんこ勃ちそうでさァ!!」
手をパンッと合わせ、”総悟感激!(はぁと)”とでも台詞が聞こえてきそうなくらいキラキラとした目を向けてくるから、真っ赤になりつつ急いで土方は否定する。
「誰が入れるかンなもん!没収だ没収!!しかもどさくさに紛れて何を下品な事言ってんだお前!!」
「チッ…入れねェのかよ」
「おいぃい!聞こえてるからな!ボソッと言ったって舌打ちと一緒に聞こえて…うっ」
騒ぐ土方を鬱陶しく思ったのか、総悟は徐に己の右脚を上げるとそのまま便器に座る彼の股間を靴をはいたまま軽く踏む。
突然の刺激に思わず土方は声を上げた。
「ヒんッ!テメ、なにし…あぁあ」
「もう10秒経ちました。待つのは終わりでィ」
総悟の行動を止めようとする土方の肩を掴み、そのまま後ろへと押し付けてグリグリと土方の股間を、今度は膝で上下に擦って刺激する。
「や、ぁう、やめろ、これからまだがっこぉ、なんだぞ…ッんんぅ」
「学校?そんなの、アンタと俺には関係ない。少なくとも、今は…」
「はっ、ぁ、は…」
快感に土方の息が上がってきて間もなく、一時間目の始業を合図するチャイムが校舎内に響いた。
ビクリとして土方は総悟を見上げると視線が絡む。
だが、愛撫をやめる気を総悟は更々ない事を一瞬にして悟った。
「ぁ、ダメだ、もう、じゅぎょうが…ッや」
なんとか場を切り抜けようと総悟を押し返そうとするが、快感に負けて弛緩した身体は思うように力が入らない。
そんな彼を見てニヤニヤと嘲笑する。
「もしかして、俺に勝てないように”契約”したのを土方さんはお忘れですかィ?」
「くっ…」
ヒクリと身体を震わせて、それでも屈しない意を表すかのようにキッと見据える。
だが、それすら総悟には煽る要素にしかならない。
顔を近づけて、ローターをヒタリと土方の頬に当てる。
「どーせ土方さんは俺には勝てねェ。だったら大人しくコレ突っ込んで授業に戻る方が得策じゃないですかィ?」
“あーそういえば、今日は俺と土方さん日直でさァ。今頃号令かける人間が2人も居なくて近藤さん困ってるんだろうな〜可哀相だなァ〜”
ワザとらしくそう言って、総悟は土方を誘導する。近藤の名を出せば土方が簡単に従う事も勿論知っていた。
最も、今日の一時間目は自習だから授業開始の号令など必要ない。だが、その事実を、遅刻してやって来た総悟が職員室に寄る際にたまたま銀八から聞いたのだ。
勿論、それを知らない土方は近藤に迷惑をかけている、というこの事態に唇を噛んだ。
悔しいだろうなァ。
追い詰められた土方の様子を見るだけで、例えば今すぐにスキップしたくなるくらい総悟は気持ちが軽くなってワクワクする。
すげェ悔しいだろうな。
もっと苛めてやりたい。
可愛いんだもん。
もっともっと、もっと。
「さ、ケツあげろィ」
一瞬、土方がまた何か文句を言おうとしたようだったが、近藤への想いには代えられないのか大人しく便器から立ち上がる。
そんな彼のズボンに手を伸ばすと、カチャッとベルトを外してファスナーを下げた。ジイィという音が土方の羞恥心を煽るようにトイレの中に響く。
「イイ子でさァ、土方さん。じゃぁ次は後ろむいて壁に手ェついてくだせェ」
「くそ、ぉ…ッ」
顔を真っ赤にして泣きそうになりながらも土方は便器を跨いで後ろを向き、
ペタリとタイル張りのトイレの壁に手をついた。
身体の熱さと掌から伝わる壁の冷たさが違いすぎて自分が今から何をしようと(正確に言うと、されそうになっている、だが)しているのか分からなくなって変になりそうだ。
「あ、土方さん」
一方、突き出された土方の臀部を覆うズボンと下着をずり下ろしながら、総悟は言う。
「ン、だよコラ」
「そういや、今朝はトイレ行きましたかィ?」
「あ、行ったけど…なんで、だ」
形の良い、尻を総悟が掌で撫でるものだからビクリと肩を震わせながら土方は答える。
すると総悟はふぅん、と呟いてペロリと舌なめずりをした。
「ま、いいでさァ。別に土方さんのは汚ぇと思わねェし…」
「は?何言って…ちょ、や!馬鹿!!」
いきなり尻たぶを掴まれ、肛門の辺りが涼しくなったと思いきや
なんと総悟がそこに顔を埋めて、舐め始めたのだ。
「おぉぉおおい!くそ、コラ何処なめてやがる総悟ぉおお!!!」
「一々説明しないと分かんないとは面倒な御方でさァ。
土方さんの肛門舐めてやすが何か」
「違う!そういう意味じゃねぇ!!
ソコは舐めるようなトコじゃ…は、う」
怒声を孕んだ口調で叫ぶ土方も、
総悟の舌がレロレロと入り口を這うものだからたまったものではなかった。
何度か総悟に犯された事は確かにあったが、精々指か総悟自身だった故に、こんなぬめる感覚は初めてで。
「そ、ぉご、だめ、だ、きたな…いぃ…」
…可愛いなァ。
全身しゃぶりつくしてやりたい。
クスクス笑い、尻を揉みながら総悟はそんな事を考える。
わざと唾液を多く含んで舐めているのか、ピチャピチャという音が響いて酷く反応する己の身体に土方は嫌悪感さえ覚えた。
震えながら、この拷問にも似た羞恥を煽る行為が早く終わることを願う。
「…平気ですかィ?内股、痙攣してまさァ」
「こんな仕打ち受けて、平気なワケねーだろうがクソ総悟…ッ!!」
土方の口から自然と出てくるのは、負けじと繰り出される皮肉めいた言葉。
それを面白そうに聞きながら、
少しだけ顔の位置をずらして双球のある袋の部分を舌先でつついた。
「ぅぁう!?」
「余裕ですねェ、土方さん。
じゃ、そろそろ授業戻らなきゃですし、入れちゃいましょうか」
余裕なのはテメェだろ、と思いながら、壁についた拳をキュッと握る。
耐える為に頭を垂れると、土方自身が僅かに反応しているのが視界に入った。
睾丸を刺激されたからに違いないが、だからといってこのまま授業に戻るという事に恐怖すら覚える。
「はい、そのまま力抜いててくだせェ」
一方、嬉々とした声色を奏でながら総悟は小型のローターに潤滑油の代わりに少しだけ口に含み
唾液をつけると土方の入り口にヒタリと押し付けた。
まだ電源をつけていないから大人しいが、これからこの卵型の玩具が彼の体内で震えて暴れると思うと心踊る。
それによってプライドの高い土方が悔しそうにする顔を想像するだけで総悟は身震いしそうになった。
「ふ、ぅ」
モノをググッと押し込めると、泣きそうな声を出しながら土方が息を吐いた。
構わずにぐちぐちと入れていくと
ある点を掠めた途端に土方がヒクンと背を反らす。
”あぁ、この辺かァ”と微笑むと、総悟はローターをそこに残して指を抜いた。
そしていやらしく土方の秘部から垂れ下がっている細いコード、
その先にある電源のスイッチを入れる。
ブゥン
「ひゃああ!!?」
羽音のような音がした瞬間、直接前立腺を刺激されて土方が鳴く。
それを見、クスクスと笑いながら総悟は言った。
「気持ちい?ねぇ、気持ちですかィ?土方さん」