「あっ高杉氏〜さてはその煙管、
トモエ5000のライバルがもってるアイテムでござるな〜」
<君は誰.1>
ある日、俺は道で一人で歩いている土方を見つけた。
何故かアニメ柄の袋を大量に持っていたのだが
真選組の隊服とあの風貌からしてあの副長サマだ。
嬲り殺してやろうと隙だらけの男を拉致し、
鬼兵隊の隠れ家へと連れ込んだのだが。
「完成度たけーな、オイ。ちょっ写真撮らせて欲しいな〜」
敵である筈の俺を高杉氏、と馴れ馴れしくしく呼んで
銜えていた煙管を相手に奪われる。
しかも土方は刀を抜くどころかカメラを取り出して
パシャパシャと写真を撮り始めたのだ。
「いやぁ〜さすがの僕でもここまで完成させるのは難しいな〜
特にこの角度なんて…」
「オイ、返せテメー」
舐めるように俺の煙管を眺め始めたアイツの手から奪い返す。
すると、「ああ、すみません怒らないで下さい」
と謝ってくるのだ。
・・・コイツ、本当にあの鬼の副長か?
「アンタ、正直に答えな。
土方の影武者か何かかい?」
「影武者〜いいでござるな、その響き〜
やべっ萌えてきたんですけど〜」
「・・・」
まるで言葉が通じない。
そう思っているとジャケットの内ポケットから
彼は警察手帳を取り出した。
「残念ながら、コスプレじゃなくて正真正銘の
土方十四郎なのでござる〜」
「…本物じゃねーか」
という事は、彼は本当に土方という事になる。
確かに顔も声も彼のモノだ。
しかし中身がまるで違う。
驚いて呆然としていると、
薄い本を袋から出してきて
『すみません、買ってきたばかりの同人誌読んで良いですか』
と訊いてきた。
「…なんだよ、同人誌って」
「おやっ高杉氏ィ、
そんな知らないフリしなくても良いでござるよ。
僕と高杉氏は煙管で繋がるオタク仲間だもんね〜」
「・・・」
誰だ、コイツ。
素直にそう思って、
暗殺してやろうという気持ちが
消えてどうでも良くなってくる。
どうしたものかと考えていると
パラパラとページをめくっていた彼が
ふと顔を上げて訊いてきた。
「高杉氏〜」
「オイ、気色悪ィからその呼び方やめろや」
「本当は君も、それ高杉氏のコスプレなんだろ」
「・・・なんだと」
俺は唯一外界を映せる右目で土方を見やる。
「だって本物の高杉氏だったら
とっくに僕の事殺してるでござろう?」
「クク、なんだ。
殺されたいのかィ、てめー」