握り締めたものは差していた刀ではなくて、その辺に落ちていた硝子の破片。
掌に食い込むソレが、痛いと脳に伝えるよりも先に感情が高杉の全身を支配した。

二人の方へ駆け出しながら心が何度も叫ぶ。

何故、何故、なんでだ!

軽く口づけした後、照れ臭そうに小突き合う二人を見たらもうどうしようもなかった。
もう今更何処にも戻れない事など承知の上だったというのに。

(知ってるのか、あいつらはお互いが俺と会っているということを知ってるんだろうか否、 知らない知らずにあいつらは惹かれあってそれで)

(嫌だ、銀時。俺からトシを奪わないでくれ)

(トシ、頼むから俺から銀時を奪わないでくれ)

かみさま、おれからあの二人をうばわないで

「は、はは」

たった数秒、世界を壊そうと目論む自分がそれでもまだ神に祈ろうとしていた事に高杉は嘲笑した。

「クク、あはははは」

先生が世界に奪われた時から分かっていた筈だろうが!
神なんて何処にもいない!


二人へ飛び掛る寸前に足を止め、そのまま見つからぬ内に路地裏に入り込むと蹲る。
そして腹を抱えて高杉は笑った。
涙が出る程笑った。

「…晋助、こんな所に居たのか。探したでござるよ」

笑い転げていた彼の背後に、音もなく立ったのは鬼兵隊の万斉であった。
ここに居るのが一人ではないと分かった途端、高杉は笑い声を上げるのを止め、長い前髪の隙間から万斉を睨むように見上げた。

「探した?ハッ、俺が何処で何しようがてめぇには関係ないだろ」

「関係ある。晋助に何かあったらどうするでござるか」

「・・・万斉」


高杉は煙管を取り出しながら立ち上がる。
そして今度は皮肉めいた笑みを見せて言った。


「これから俺のする事には口出すなよ」


絶望ミゼラブル


「あぐ、あぁああッ!!!」

「は、はは」


『今夜、万事屋に来て』

銀時を装って土方を呼び出せば、
ノコノコと本当に一人で来やがった。
刀はさげているものの着流しというラフな格好。
何の疑いもせずにそうして軽装でやって来たからには
本当にコイツは銀時と愛し合っている、という確信が出来た。

そんなのは許されない。
敵からも味方からも恐れられた白夜叉が
誰かを愛するなどと。

俺は世界に大切なモノを奪われて
もう何処にも帰る場所がないのに。

なのにお前は。

許さない。

そんなのは許さない。

銀時。
お前は俺と同じだ。
思い出させてやるよ。

「ンぐぅ!?」

身長差はあったが、油断しきった男を背後から襲うのは楽なものだった。
合鍵で万事屋の玄関を開けた土方を羽交い絞めにし、
そのまま部屋に押し込んで押し倒した。

今日は銀時達は下の大家共と一緒に旅行に行っている。
つまりこの建物は今夜は誰もいない。
どんなに騒ごうが何だろうが、ここで起こった事は誰も知らない。

ただ、『今夜の事』は俺が起こしたというのが銀時に伝われば良い。

アイツが愛する、壊れた土方をここに残して。


「てめぇ、高杉か…!?なんで、ここに・・・ッ?」

「ハッ、アンタが本当に銀時のネコだったなんてなァ。
 この目で確認するまで信じられなかったぜ」

銀時の、という所有物を思わせる言葉を口にすると
暗闇の中でも土方の顔がカアッと赤くなるのが分かった。
それもまた俺を、妙に苛立たせた。

「どっ、どういう事だっ!
 なんでお前が銀時の事を知って…」

タスッ。

軽い音が鳴る。
途端、土方の肩からブシャッと血が迸った。

「うぁあああ!!」

「うるせぇな。お前は今から俺に壊されれば良いんだよ」

五月蝿いから黙らせる為に俺は、刀を
土方の肩に床に垂直に突き刺した。
突然の痛みに土方が悲鳴を上げる。
だが、彼は動く方の手を咄嗟に己の刀に伸ばした。

しかし俺の方が早かった。
肩に突き刺していた刀を勢い良く抜くと、
痛みに耐え切れなかったのか
土方が呻き声を上げながら動きを止める。
その隙をつき、そのまま握っていた刀の柄の部分で顔を殴った。

「…っ!!」

声も出せずに土方は息を呑む。
彼の鼻からは衝撃に耐え切れなかったのか血が流れ出た。
俺はそんな土方をほくそ笑んで見下ろしながら
乱れた着流しの前を乱暴に肌蹴させる。

「や、めろ!」

俺の目的に気付いたのか土方は抵抗しようと
上半身を起こそうとする。
いまいち大人しくならない相手にイラつき
鞘で思い切り土方の腹を突いた。

「か、は…!」

今度は悲鳴を上げてびくん!と身体を痙攣させる。
口からは唾液を吐き、鼻からは血を垂れ流し。
その様がとても滑稽で笑いが止まらない。

違う。
滑稽じゃない。
これは興奮だ。
あの白夜叉が愛し、大事にし、護るコイツを
いまからぐしゃぐしゃにしてやる興奮だ。

ぐったりとしている土方の両手を手早く
解いた帯で縛り上げ、
血がついた刀の切っ先で性器を隠す下着を切り裂く。

するとアイツに愛されて優しく愛撫されているであろう
土方の牡自身が露わになる。
痛みで萎えきっているソレを思い切り俺は掴んだ。

「ひゃう!」

意識が朦朧としていたのか、
現実に引き戻されたかのように土方が鳴く。
しかし、初めに乱暴に掴んだのとは違い
今度は緩く扱いてやると相手は戸惑いの表情を見せてきた。

「な、に…何が目的なんだ、お前…」


嗚呼、銀時。
お前はこの後どうするんだ、いつも。
口付けて愛撫して、突っ込んで愛するのか、こいつを。
この男を優しく愛するのか。
抱いて抱いて、愛し合って喜んでいるのか。

お前が。
お前が。

誰よりもこの世界を憎むべき筈のお前が。


「へェ?じゃあ土方。アンタも何が目的なんだい?」


無防備に晒された、性器の奥に隠された蕾。
乾いておよそものを受け入れる状態ではないそこへ
俺は鞘を突き入れる。


「猫撫で声で、アイツを誘惑しやがってなァ」

「いやぁああああ!!!」


肉が裂かれる痛みに土方は背を弓のように反らして叫んだ。
俺は構わずにピストン運動のように鞘を抜き差しする。


「うっ、いやっ、うっ、ううっ」

先程までの気迫は無く、土方は合わせて小刻みに啼く。
可笑しくてたまらず続けていくとつぷん、と滑りがよくなる。
どうやら傷ついたようで秘部からは血が流れ出た。

「クク」

まるで処女を奪った気分だ。


「ふっ、ぅ、いたい、いてぇ…」

両手を縛り、着物を乱し、 殴って肩を刺して。
そうだ。
あともう一仕上げが残っている。

「ボロボロになれや、土方ァ」

ズルッと鞘を引き抜き、血を流すその腰を持ち上げる。
そして蕾に俺自身を宛がうと
大人しかった土方が突如暴れ出した。

「やめっ、嫌だぁ、やめろぉおお!!」

しかしもう遅い。
ズプリと土方の体内に牡を侵入させた。

「あ、あぁ…いやだぁあああぁ」

叫べ。
鳴け。
泣き叫べ。
お前が嫌がるほど、壊されるほど
絶望を感じるほどアイツの絶望も大きくなる。


「はっ、はは、ははは」


可笑しい。
可笑しい。

この家に帰ってきたアイツはどんな顔をするだろう。
帰って来るべき場所で
帰りを待っている男が
縛られて殴られて、犯されて壊れたその姿を見たら。

俺を憎むか?
それとも俺をこんなにした世界を憎むか?
それとも、俺を野放しにした自分を憎むか?

狂え、狂え、狂ってしまえ

お前も俺も、アイツも全部。

松陽先生を奪ったこの世界なんか、
無情なほど絶望しかない事を思い知れば良い。


「ふ、ぅ、ぎんときぃ…」


銀時

おもいしれ

「あっあぁ…高杉、も、やめっやめてくれ…」


そしてトシ。

お前も。


「高杉ねぇ…お前、本当に俺の事覚えてないのかい」

「・・・え…?」


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