沖土連載『ドSな事情』で
もしトシが総悟たんではなくザキを選んでいたら、な場合
「副長!」
教室に戻ろうとするあの人の手を俺は掴んだ。
驚いた表情で俺を見てくるけど絶対に屈しない。
だってここで沖田君が居る教室に戻ったら
もう二度と副長に会えなくなる気がしたんだ。
それは嫌だ。
俺は、沖田君から副長を救いたいのに。
「山崎。馬鹿、言う事聞けって」
「嫌です。俺、副長が一緒に帰ってくれるまで放しません」
頑として動こうとしない俺に
副長は盛大な溜め息を吐く。
だって沖田君の所に戻ったらヒドイ目に合わされるのは目に見えてるんだ。
俺は、あの人にローター返しちゃったから。
「呆れられてもいい。馬鹿だって言われても良いです」
身体を許されただけなのに、自惚れだって分かってる。
でも
「でも、好きなんです。護りたいんです」
俺は。
貴方を。
「…わかったよ」
強張っていた副長の腕から力が抜ける。
信じられなくて顔を上げると、何故か涙ぐんだ瞳と目が合った。
「副長?…どうしたんですか?」
「うっせぇ、何でもねェよ」
「でも、何でもないのになんで泣くんですか」
「…ッ、お前が!!」
張り詰めていたものが切れたかのようにボロボロと副長の目尻から涙が零れだす。
「優しい事、言うから…!」
…ねぇ、副長。
こんな事を優しさと感じて泣いてしまうなんて
今まで一体どれだけ苦しい事我慢して、過ごしてきたんですか。
「土方さん」
呼んで彼を抱き寄せる。
少しの抵抗の後、俺の肩で土方さんは泣いた。
「帰りましょう、今日は一緒に」
俺より背が高い愛しい人。
もう絶対に泣かせたりしない。
fin.
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