ねェ神様?
もしいるんだったら、あの気高い黒猫を
俺にください
土方さん。
土方さん。
散歩に行きましょう。
と誘ったら、
死ね、黙れガキ
と言われてしまいました。
大好きな想い人はどうやら、仕事に終われているらしく
非番の俺を相手している余裕はないようです
ああやってイライラしている時の土方さんは
イジってもあんまり可愛い反応を返してはくれません
寝る事にも飽きたので、仕方がないから
その辺をブラつく事にしました
屯所を出ると、なんとなく雨が降りそうなにおいがしたけれど
でも傘を持って出るのも面倒なので
そのまま手ぶらで出かける事にしました
楽しそうに遊ぶ子どもや
いちゃつくカップルや
八百屋で値切る奥さんや
そんな平和そうな人々を横目で眺めながら。
時々、大きな態度で江戸の人間をイビる天人に
イラっとしながら
そして、路地裏へ入っていく黒猫とか見つたりしながら
俺は、愛しい土方さんを想うのです
「ちくしょー長ェ雨でさァ」
駄菓子屋の前で、俺は一人ごちた。
昼頃から降り始めた雨は、夕方になった今も続いている。
止むまでベンチで居眠りしながら雨宿りしていたが
中々予想通りにはいかなかった。
駄菓子屋のババァに傘でも借りればいい話なのだが
それも面倒で、降りしきる雨をただ眺めた。
折角の非番だから、土方さんと過ごしたかったな。
そんな事を考えていたら、
俺の前に誰か立ったらしく影が出来る。
そして、その人物は声をかけてきて。
「やっぱりここかよ」
傘をさして煙草を銜え、不機嫌そうな土方さんが、いた。
信じられなくて俺は顔を上げたまま身体が止まる。
土方さん。なんで。
「オメー、傘も持ってかないで出て行きやがって」
一番隊隊長が風邪でもひいたら
他の隊士にしめしがつかねーだろ、と呟かれる。
「・・・でも、傘一本しかないじゃないですか」
「仕方ねェだろ、見回りのついでに来てやったんだ。 お前の分まで持ってくるなんてかったるくて出来るかよ」
いいから入れ、帰るぞ。とうながされるけど。
でも、気づいてますかィ、土方さん。
これって
「あいあいがさ」
言うと、初めは意味が分からなさそうにキョトンとした表情の土方さんの顔が
みるみる内に赤くなっていく。
ああ、もう本当、なんて可愛いんだろう、この人。
言われるまで気づかなかったんですかィ。
「ふ、ふざけた事ぬかしてると置いてくぞ、総悟ッ!!」
「いやでさァ。
鬼の副長さんとあいあいがさ出来るなんて俺ぐらいですしィ」
ニン、と微笑みを向けると
悔しそうな土方さんがいるから、
不意打ちでそのほっぺたにチューして差し上げました。
土方さん。ねぇ土方さん。
もし神様にオネガイ事叶えてもらえるなら、
俺はアンタが欲しいと、お願いするよ。
降っていた雨は屯所に戻る頃には止んできて、
鮮やかな夕暮れを空に映した。
fin.