卑猥な広告を貰った。
あの子に会いたいのに会えない日だった。
時々俺の思考回路は狂うようで、
会いたい時に会えないと
なんで自分が生きてるのか分からなくなる時がある。
そうね。
人間は生きる為だけに生きる事は出来ない
弱くて脆い、悲しい生き物だもの。
卑猥な広告を貰った。
あの子に会いたいのに会えない日だった。
エロい格好した女の子達が
挑発的なポーズをして
紙にプリントアウトされている広告だった。
無意識にあの子に似てる娘を探す。
でもやっぱり俺の欲しい笑顔はいない。
そうね。
人は生きる為だけに生きる事は出来ないのに
性欲だけは治まらないのはどうして?
頭の中に廻る妄想。
あの子は涙や涎や汗を垂らしながら
俺の両脚の間に顔を埋めて
ぬちぬちと音を立てて俺の牡に舌を這わす。
ほら、もっと俺を見て!
呼んで、舐めて、俺を挑発しろよ!
触って。頼むから。
妄想じゃ足りないんだよ。
マスターベーションじゃ足りないんだよ。
お前の顔と、声と、手と、体じゃなきゃ、意味がない!
「ねぇお兄さん、寄ってかない?」
「…触んないでくれる?」
呼び込み女の胸が腕に当たって
気持ち悪くて仕方がなかった。
あまりにも不快だったから
さっきもらった卑猥な広告をビリビリに破いて
その女に振りまいてやった。
意味がない!
セックスシンボルのあの乳房も、
あの子についてなきゃ意味がない。
膣だって、別にあの子の体についてないならいらない。
『なぁ、子供産めねーって事は
俺達の遺伝子は残せないワケだから…
それって、男同士で愛し合った罰かな』
いらない。
あの子は俺に家族を作ってやりたいらしいけど
大丈夫だよ。
俺には新八と神楽がいるから。
→
だから心配しないで。
自分の体が男の体だからって落ち込まないで。
嘆かないで。
ああ、会いたい。会いたいよ。
伝えたいよ。
大好きだって。
ねぇ大好きだって。
だいすきだって
「銀時!」
呼ばれる筈のない声。
でも聞き間違える筈のない声。
俺は振り向く。
こんな人込みの中に居る筈のない、あの子の姿。
こんな人込みの中でも間違える筈のない、君の姿。
「たく、こんな所に居たのかよ」
「土方君。なんで」
息を切らして俺に追い付いた君。
信じられなくて茫然としてしまう。
…だって出張だって言ってたのに
「早めに仕事切り上げてきたんだ」
「う、嘘。だって絶対に間に合わねぇって」
「てめ、上等だコラ!俺の努力を無駄にする気か?
いいから素直に喜べや!」
「じゃ、じゃあ喜ぶ前に
一番初めに言いたかった事言って良い?」
「?
なんだよ」
きょと、と君は首を傾げる。
そのふと見せる無防備な仕草が愛しい。
「だいすき」
俺の素直な言葉に耳まで真っ赤になって
素直に慌てふためく君が好き。
「…俺、も」
それで言った後に後悔して、
恥ずかしそうに顔を片手で隠す君が好き。
「隠すなよ」
「いっ嫌だ、見るなバカ!」
口元で囁くと
怒りながら照れる君が好き。
俺がさっきまで
気が狂いそうなくらい君を求めてて
ひどく自分勝手な妄想をしてたよって
教えたら一体どんな顔するんだろ。
なんて言うかな。
「な、何をニヤニヤしてんだよ」
「えー内緒v」
やっぱり俺だけの秘密にしとこう。
君は俺の精神安定剤で
処方箋を書くのは俺自身だし。
「・・・ムカつく」
ねぇ、大好きだよ。
どうしたら良いか分からなくなるくらい
EnD.