とうとうこの日がやって来てしまった。
そう、お泊り会だ。
一つ屋根の下、男女が一泊生活を共にするという
なんともけしからぬイベント。
まあ高尚な僕には関係の無い話だが
そう高をくくっているわけにもいかないのだ。
僕の土方君の体があのドSコンビに夜の間も
狙われると思うとお泊り会の3日前から眠れなかった。
おかげで眼鏡はかけっぱなし、鼻に痕すらつく始末だ。
(許すまじ、ドSコンビ)
更に隣のちょうちょ組のたかしゅぎにも
先日の逆上がりの事件で
僕の土方君は目を付けられてしまったようだ。
お泊り会では彼の保護者、近藤しゃんもいないし
頼みの綱の山崎先生は地味すぎて頼みの綱にならないし
ちょうちょ組の万斉先生もいつも三味線弾いて
「ロックでござるぅ〜」とか胡散臭い。
やはりこうなったら僕が土方君を護らなければ!
僕を理解してくれる唯一の彼を!
伊東鴨太郎日記
〜僕と君との間では、今日もドSが邪魔をする〜
『○月△日
今日は幼稚園で夕食と言う慣れない環境のせいか、
僕の組の連中も浮き足立っている様子だ。
そんな時でも僕は冷静沈着に出された夕食を
口に運び続けていた。』
銀「せんせー俺キノコ嫌いなんで、苺もらえませんかねぇ」
総「せんせぇ〜俺は別にキノコ嫌いじゃないですが、死んでもらえやせんかねぇ」
山「ちょ、だから何なの君達!好き嫌いしちゃダメって言ったでしょ!
ていうか沖田君に限っては、好き嫌いの次元じゃないし!」
総「ちっ、うるせーんだよ地味野郎が」
山「うぉおい確実に今舌打ちしたよね!殺意向けてたよね、俺に!」
銀「沖田君。だから先生についたあだ名はジミー先生なんだよ」
総「あぁなるほど。さすが旦那でさァ。地味先生ですね分かりやした」
山「ちょっと待って!全然分かってないよ!
ジミーだったらまだあだ名な感じがするけど、
地味とか本当に只の地味じゃないか!」
土「うるせぇえぇええ!
食事中は黙って食べる!常識だろうがてめぇら!」
『さすがは僕の理解者、土方君。
うるさい奴らを叱れる力量を持っている。』
銀「ごめんなさぁい、土方君。怒らないで〜」
総「ほら、謝りなせェ地味先生」
山「ちょっと何自分は謝らずに俺に謝らせようとしてんの!?
元凶といえば君でしょ!?」
土「ったく、騒がれたら注意が逸れてマヨネーズが零れる所だったじゃねぇか」
『さすがは土方君。
エキサイトした後もすぐに食事に戻れる切り替えが出来る
所も僕は好きさ…って』
伊「土方君!何だいそれは!!」
土「へ…?何って、何が?」
伊「その、食事に乗っている黄色い物体だよ!」
土「ああ、マヨネーズだよ」
『なんと、食事の上にてんこ盛りのマヨネーズがかけられていたのだ!
あまりの量に下にある料理が見えない程。
尋常じゃない光景に僕はとりあえず眼鏡を上げずにはいられない。
だがそんな僕に、土方君はニコリと微笑み』
土「美味いぜ、食うか?」
『そのなんだか原型がよく分からないものを差し出してきたのだ!
僕は呆然としながらも頭の中の計算を止める事だけはしない。
ここで断って土方君に嫌われるか
ここで愛想よく食べて土方君の高感度を上げておくか…』
伊「はっ…!」
『だが、そこで僕の答えが弾き出された。
土方君の食べかけ、それはつまり』
伊「そんなに美味しいなら、一口貰おうじゃないか」
『土方君と 間 接 キ ス 』
伊「いただきます(パクッ)…
…
・・・
・・・・・!!!!」
『だがしかし、人生はそんなに上手くいくものではないと僕は
この時初めて悟った。
そう、人生は甘くない』
伊「(涙目で)ひじかた、土方君。あの、僕ちょっとトイレに」
土「伊東、そんな一口と言わずもっといっぱい食って良いぜ?」
伊「はい・・・」
『惚れた弱みというか、笑顔で土方君に言われては敵わない。
吐き気を抑えながら愛しい僕の土方君の好物を
彼が納得するまで食べ続けた』
次回・ちょうちょ組といよいよ対決!?
お化け嫌いな銀土を連れて、鴨太郎は肝試しから生還できるのか!?