そんな事は聞いてない、とでも言うように怪訝そうな表情で言った後、ハッと何かに気付いたのか、再び問う。

「その依頼人って奴…黒服着た男だったか?」

「黒服っつぅか…黒ずくめ?みたいな?」

「…」

黒い服を纏ったサングラスをかけた男だった。
依頼人の事は詳しくは言えないのでそこまでしか(銀時自身、依頼人の素性を一切知らない)口にしなかったが、それを聞いて土方は考え込むように俯く。

「なぁ、腹減んない?ここのルームサービス使っていい?」

「別に使ってもいいが、俺は減ってねェからな」

「…むしろここに連れ込まれてから、ちゃんと食べてんの?って銀さんは思うんですけど」

ベッド脇に置いてある受話器に耳を当てながら土方を見据えると、少しだけ戸惑い交じりの視線が返ってきた。やっぱりちゃんと食ってないんだろうな、と銀時は思う。

「土方君、とりあえずお風呂入っといで。お湯入れといてやったから」

「え」

「そんなベタベタな体のまんまじゃ気持ち悪いでしょ、注文は俺がすっから」

早く、と強めの口調で促すと渋々と立ち上がり、頼りない足取りでバスルームへと向かって行った。
とりあえず一番高いデザートと、それと一番高い食べ物にはマヨネーズ大量にかけて、という無理な注文を銀時がし終わった後、突如悲鳴がバスルームから聞こえた。

「なに、どうしたの土方君!」

「しろっ、白いのが…!」

急いで銀時がバスルームに入ると、浴槽から上半身だけ出して縁に縋った土方が青ざめている。

「お、俺の肛門から何か白いのが…!」

「…は?」

「万事屋!なんだコレは、病気でも移されたのか俺は…!?」

両手についた白濁液を見つめ、ワナワナと震えながら土方は言う。
てっきり何か事件でも起きたのかと思った銀時は、何てことない状況にはぁぁと溜め息をつく。

「いや、ビョーキじゃなくて精液だから、ソレ」

「…いやいや、嘘だろ」

「いやいやいや!中出しされたんだったらそれしかありえないから!」

「え…だって、直腸に出されたら吸収されるモンじゃないのか」

ええええええ

声にならない叫びが銀時の心の中でこだました。

嘘、待って!
この子セックスした事ないとかそんなんじゃないよね!?

「いや、あの…アナルに出した事、ないの?」

「馬鹿かお前。ケツに出した事も、…まして入れた事もねェよ」

少し照れた感じで言いながら、土方はブクブクと湯船に沈んでいく。
あーそういうモンか、と銀時は納得した。
彼は中出しどころかむしろちゃんと、相手の事を考えて律儀にゴムも付けるんだろうなァ…と考えたところで、ハタ、と気付いた。

「もう正体が分かったから出てけよ。後は自分で…」
「というか、ねぇ土方君。ちゃんと中に出されたの、掻き出さなきゃダメだよ。腸に残ってると後でお腹壊すから」

「掻き出…す…?」

銀時の言葉をしばし考えた後、まさか、というように顔を上げてくる。

「ゆ、指突っ込んで出せ、って言うのか」

「当たり前でしょ。後は吸ってもらうとか」

「吸う!?」

面食らったように土方が叫ぶ。
興奮すると声が大きくなるのは仕方ないが、風呂場は響くし何せこの至近距離。思わず耳を塞ぎながら銀時は答えた。

「あー…やっぱ知らないワケね…で、どーする?」

「ど、するって」

「銀さん、どうせなら手伝うよって」

「はぁあああ!!?」

動揺しまくりの土方が暴れ、湯が僅かにかかる。だが、そんなのはお構いナシに彼に近づいた。

「だって、アレは初めはぜってぇ一人じゃ無理だって」

「万事屋ぁああ!落ち着け、てめぇ自分の言ってる事としようとしてる事分かって…ぅ、あ!」

「はいはい、分かってるからおいで。銀さんのお仕事は多串君のお世話する事だから」

余裕めいた調子で言いながら、逃げようとする土方を抱き寄せ、同時にシャワーのノズルを手に取る。ザブンと浴槽の中の湯が波打った。

「で、出来る、自分で出来るから、放せ!お前は金魚の世話でもしてろや!」

「いーからホラ、膝立ちして俺の肩に掴まって?」

「ひん、ぅ」

往生際悪く騒ぎまく彼の背中に手を回し、もう片方の手をスルリと臀部の割れ目に入れ込むとピクン、と反応して土方が声を上げた。
入り口に指を当てると余計に感じるようで、なんだか罪悪感が芽生えてきた銀時は早めに終わらせてやろうと気持ちを急かす。

「よ、万事屋、本当、むり、だ…」

「力抜いて。そうしたら早く終わるから」

「そんな事言っても…あっ、あ!」

土方が息を吐いたのを見計らって、指をつぷんと押し入れる。